コラム

心理学における「天才」とは

2020.9.10
  • 犯罪心理学
  • こころ検定4級

心理学では、天才とは何かに関する研究が古くから行われています。

 

 

 

心理学の初期の研究には「個人差研究」というものがありました。
これは、心や精神が人によって異なるという観点から「何がAさんとBさんを別の人間として成立させているのか?」「個人の特徴とは、どのような心理・精神の要素によって決まるのか?」などについて、研究が進められてきました。

 

その過程で「天才的な人物の特徴とは?」「天才と凡人を分ける要素は何か?」などに関する研究も行われました。
心理学における知能に関する研究や、心理アセスメントにおける知能検査も「天才に関する研究」と関連が深いものです。

 

心理学において、天才とは、一般の人々やいわゆる「秀才」と比べて、極めて卓越した文化水準で稀にみる創造的業績を成し遂げ、人類にとって歴史的・社会的に甚大な積極的影響をもたらした人物、あるいはその人の精神的な能力やパーソナリティ(性格・人格)などの総称的な意味合いで定義されています。

 

心理学者のランゲ・アイヒバウムは、天才は心理学的実体というよりも、社会の中での価値評価という「関係」として理解されるべき概念であると述べています。
また、アイヒバウムは天才には、各個人間で共通項となるような要素はないとも述べていますが、高い固執性・努力・自信などは共通するのではないかとも指摘しています。

 

精神科医のエルンスト・クレッチマーも、天才の心理学的な研究に従事した1人です。
クレッチマーは、天才のもたらす価値は「特殊な精神構造の中から、心理的必然性に基づいて生まれ出たものに限る」という前提条件を設定し、天才とは単に既存の知識や技術の学習や教育の延長に位置づけられるものではないと定義しています。

 

また、心理学者のゴールトンは、家系研究から天才が遺伝的であることを実証しようとしました。
しかし、家系の中に類似する他の優秀者を全くもたない天才も多く、もし、遺伝的基盤があるとすれば個人において独自の遺伝要因の組合せの効果(非相加的遺伝効果)と環境との交互作用によって、天才が作り上げられるのではないかと述べています。

 

犯罪心理学者ロンブローゾは「天才狂気説」という仮説を提唱していました。
ロンブローゾは、天才と言われた人々の中には、いわゆる統合失調症や双極性障害・てんかん・などの精神疾患(症状)を抱えている人も多かったと報告しています。

 

この仮説に基づく、天才のパトグラフィ(病跡学)という分野も確立されており、これは天才の研究に大きく寄与しています。
しかし、天才と精神疾患との関係は非常に複雑であり、業績を出し尽くしてから精神疾患を発症する人もおり、また精神疾患を発症しながらも創造的活動をしている人(病気の症状や経験が、独創性の源泉となっているケース)、もちろん、全くメンタル面が健康な人もいるわけです。

 

従って、天才だから必ず何か問題を抱えているというのは誤りであると言えるでしょう。
心理学者のターマンは、高い知能、具体的にはIQで140以上の人のことを天才と定義しています。

 

そして、ターマンはIQ140以上の児童の追跡調査を行っています。
その結果、この「天才児たち」は、けっして病的ではなく、むしろ社会的適応性に富む望ましいパーソナリティを有する場合が多いということが判明しました。
しかし、この「天才児」が大人になった際にも、同じく天才的なままであったかというと、けしてそうではなく、本当に独創的な天才は排出されなかったも言われています。

 

一般的にも天才はIQの高さで判断されことが多いものです。
IQの測定は各種知能検査によって実施されます。
こころ検定4級の第7章では、知能について概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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