社会がグローバル化することと心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
近年、グローバル化社会が拡大しており、日本で生まれても、そのまま日本で暮らし続けるわけではなく、海外に生活の拠点を移す人も多く存在します。
また、海外から日本に移住する方々も増えており、単なる観光ではなく、学校生活や仕事を日本で続けていくという外国人の方も増えています。
コロナ禍において、一時的に海外からの人の流入や、日本から国外への人の流出は制限されていたものの、コロナの影響が落ち着いてきたことで、グローバル化の流れが復活し、さらに加速すると考えられます。
では、グローバル化が進むことと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学的な観点から考えてみたいと思います。
まず、グローバル化でイメージしやすいものとして、海外で生活していた人が日本に帰国するケースがあるかと思います。
いわゆる、帰国子女というものです。
帰国子女という言葉幅広く認知された言葉となったのは1965年であるとされています。
この年、東京学芸大学附属・大泉中学校において、新たに帰国子女学級というクラスが設立されました。
1965年より前にも、いわゆる帰国子女の方々は存在していましたが「在留邦人子弟」や「海外勤務者子女」、もしくは単に「外国から帰国した児童・生徒」となどの呼称が使われていました。
それが、1965年を契機に統一して帰国子女とよばれるようになったわけです。
帰国子女のように異なる文化と接触した場合に「こちら側」が何らかの変化をする場合と「相手側」に何らかの変化が起きる場合の、2つのケースが考えられます。
これを文化変容とよび、特に個人レベルでの変化を心理的文化変容とよびます。
心理的文化変容は統合・同化・分離・境界化という4つの種類があるとされています。
帰国子女の方々は、日本とは違う異文化の中で成長・発達をしており、海外にいる時から様々な心理的な影響を受けています。
さらに、帰国後にそれまで長く生活していた国・地域と異なる日本に戻ってくることで、また新たな心理的な影響を受けることになります。
これらの影響は、数か国語を話すことができるなどのポジティブな側面もありますが、逆にネガティブな側面も多く存在します。
帰国子女などのように異文化での生活をしていた方と関連の深い現象として、カルチャー・ショックがあります。
カルチャー・ショックとは、文化人類学者のオバーグが提唱した概念であり、異なる文化的環境で既に自らの文化として学習された強化随伴性や記号・象徴・スキーマ・スクリプトなどの再学習が迫られる時に経験するストレスの総称であるとされています。
つまり、カルチャー・ショックとは、学習心理学(行動分析学)や認知心理学などの*観点から、新たな行動様式の学習・獲得、そして、新たな認知様式の獲得や修正によって発生する不適応やストレスであるということになります。
そのため、カルチャー・ショックは別名、文化変容ストレスとよばれることがあります。
カルチャー・ショックは文化的適応を阻害するものであり、ネガティブな要素も多く含まれています。
一方で、これを乗り越えることで成長できるというポジティブな要素もあります。
カルチャー・ショックには、前述のようにネガティブな側面もあれば、ポジティブな側面もあります。
そして、一般的にはネガティブな要素の方がより深刻であると考えられています。
そこで、カルチャー・ショックのネガティブな影響を最小限に抑えるための方法についても研究が進められています。
教育的なアプローチとしては、自分自身の文化的特性への気づきを予め深めるという文化的覚知法、異文化における行動の原因の帰属の仕方を認知的に学習する文化的同化法、異文化での社会的スキルを学ぶ方法などがあります。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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