心理学では、うわさ(噂)についても様々な研究が実施されています。
インターネットが普及したことで、現在ではtwitterやFACEBOOKなどのSNSが発達し、情報が氾濫しています。
個人が気軽に不特定多数に向けて情報発信が可能となり、情報の量は多くなっても、信頼できる情報は多くないというのが現状です。
そのため、私たちは根拠のないうわさに右往左往させられることが多くなっています。
その上、根拠のないうわさが広がることで、人権侵害や経済的な損失などが発生することもあり、うわさは無視できない問題を含んでいるのです。
心理学では、特に社会心理学の分野でうわさの研究が実施されています。
社会心理学では、うわさのことを流言とよびます。
流言は、その正しさを証明する証拠がないにもかかわらず“ 本当であるかのように”に伝えられていく情報のことを指します。
流言は私たちが誰かに話すことで、少しずつ広まっていきますが、徐々にその内容が変化していく傾向があります。
たとえば、伝言ゲームをした際、最終的に伝わってきた内容が、当初のものとは全然違うものになってしまうことがあります。
流言も伝言ゲームと同じように、人づてに話が広がっていくうちに、どんどん内容が変わっていってしまうことがあるのです。
また、流言の広まり方を定式化することが可能であるとされており、心理学者のオルポートは【 R = a×i 】という式に基づいて流言の広がりを考えることができるとしています。
オルポートの提唱した式において、
【R】:流言の広まる量
【a】:情報の曖昧さである
【i】:その情報の持つ重要性
と定義しその大きさに比例して、うわさは広まっていくとされています。
そのため、非常に曖昧であるにもかかわらず、 重要な 情報であればあるほど、うわさはあっという間に広がっていってしまうということなのです。
うわさは定式化もできるのであれば、何とか悪影響が出ないようにコントロールできないかと考える人は多いかと思われます。
しかし、うわさをコントロールすることは非常に難しいということが心理学的な研究によって判明しています。
法律などによる言論統制を実施している国や地域でも、うわさの発生・拡大を制度的にコントロールすることができないという事実があります。
また、一度出た根も葉もないうわさを何とか打ち消そうとすることも「うわさのコントロール」に含まれますが、これも難しいことであることが分かっています。
たとえば、根も葉もない悪いうわさを立てられた本人がそれをいくら否定しても「逆に怪しい」というように捉えられてしまい、うわさを掻き消すことはできません。
根も葉もないうわさを掻き消すためには、うわさの対象となっている本人以外の第3者が、うわさの内容とは逆、もしくは否定するような情報を発信する必要があるとされています。
また、その第3者が信頼できる人物であるということも重要な要素となります。
しかし、信頼できる第3者による「火消し」も、うわさが燃え盛って「炎上」してしまっている状況では、あまり効果がないということが判明しています。
また、私たちは元来、「つまらない・ドラマティックではない真実」よりも「面白くてドラマティックなうわさやウソ」の方を好む傾向があり、正しい情報や信頼できる第3者からの情報だけでは太刀打ちできないこともあるのです。
そこで、欧米では個人や社会に悪影響を及ぼす可能性のあるうわさの拡大に対抗する専門機関が設置されています。
これらの機関では、24時間体制でうわさに関する問い合わせに対応し、その真偽について正しい情報を提供しています。
また、うわさの拡大が大きな損害や悪影響を発生させると判断された場合は、TVなどのメディアを通じて正しい情報の発信を促すという取り組みもなされています。
私たちは他者とコミュニケーションを取る中で、認知・感情・行動をするわけですが、正しくない情報や根拠のない情報からも影響を受けてしまうのです。
うわさは人間の心理的な要素が多く、心理学的な研究が現在も盛んに進められています。
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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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