心理カウンセリングは基本的にはクライエントとカウンセラーが1対1で実施する者ですが、ケースによってはカウンセラー1人に対して、複数のクライエントという構成で実施するカウンセリングの形式があります。
グループ・セラピーとは、治療的に組織された集団において、カウンセラーとメンバー、もしくはメンバーとメンバーの間の対人コミュニケーションや集団力動によって、参加メンバーそれぞれのパーソナリティや行動の改善を目的とするものです。
対個人へのカウンセリングと比較すると、対人関係上の問題の改善・解決が目的となること、過去の対人関係の問題よりも、現在起きている問題が重視される点が特徴です。
グループ・セラピーの代表的なものとして、サイコドラマや芸術療法、ゲシュタルト療法、SST、エンカウンター・グループなどがあります。
特にエンカウンター・グループは最も有名な部類に入るグループ・セラピーといってよいでしょう。
エンカウンター・グループは、ロジャーズやジェンドリンが創始したもので、1960年代から70年代前半にかけて、アメリカで自己成長を目的とするものとして確立されました。
当時のアメリカの社会的状況として、ベトナム戦争に対する反戦運動、差別に対する抗議、ヒッピーの出現などがあり、人々は経済成長と引き換えに失った心理的な共同体感覚や、自分らしくあることを求め、それがグループの発展に大きく影響したと考えられています。
エンカウンター・グループは、4、5日間の合宿形態をとり、ファシリテーターは参加者の心理的安全を保証するとともに「今、ここで」という感覚から率直に自己開示すること、自らを受容し他者からの受容に気づくこと、頭で考えることよりも体全体でその瞬間を感じることなどを重視します。
エンカウンター・グループをはじめとするこれらのグループ・セラピーは、対象や状態が異なるものの、共通の治療的要因が見出されることが多くあります。
集団に受容される体験、感情面のカタルシス、ありのままの感情が受け入れられ共有され、新たな適応的な感情へと変化する修正感情体験、他の参加者の気持や行動を体験することで、悩んでいるのは自分一人ではないことに気づく普遍化、模倣などを通じての新たな適応的な行動の学習など様々なアプローチ手法で構成されています。
対象となる人は多岐にわたりますが、例えば、児童期・思春期の不適応状態、摂食障害・パーソナリティ障害、アルコール依存性障害などがあります。
前述のアルコール依存性障害などのような場合は、同じ悩みや問題を抱えた人々が集まり、相互に援助し合うことを通じて自己の回復を図ることを目的としたグループ・セラピーもあります。
この場合は、伝統的な治療関係における治療者-患者間の支配や依存関係を否定し、グループには治療者や指導者をおかず、あくまでセルフヘルプ(自助)を原則とするものです。
セルフヘルプ・グループの代表的なものとして、1930年代にアメリカで生まれたアルコール依存者のグループAAや、アルコール依存者の家族のグループAl-Anon、薬物依存者のグループNA、ギャンブラーのグループGAなどの嗜癖問題を中心に様々なグループ・セラピーの団体があります。どの団体も参加者の匿名性を重視しているという特徴があります。
グループ・セラピーは、多少の幅はありますが、参加者は8名前後であり、週1~2回、1回あたり60~120分であることが多いです。
また、治療目標も多岐にわたりますが、パーソナリティの改善といった広範なものから、退院準備、症状の軽減、生活技能や対処技能の獲得などの限定的なものも含まれます。
治療期間は対象や目標により、数セッションの短期間のものから、期間を限定しない年単位のものまで様々です。
また、グループ・セラピーには、非構成的グループによるものと、構成的グループによるものがあります。
非構成的グループは、グループ活動の進行の主導権を参加者におき、トレーナーはファシリテーター(世話役)として集団に参加します。
構成的グループでは、グループ活動の過程を段階的に設定し、トレーナーはリーダー的な役割を果たすことになります。
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