人間の持つ印象について、心理学ではどのように研究が行われているのでしょうか。
心理学において、特に認知心理学や社会心理学の分野で、人間の印象に関する研究が実施されています。
本コラムでは、人間の印象に関する心理学的な研究について、いくつか解説していきたいと思います。
印象というものは、ある程度、コントロールすることができると考えられています。
これは、専門的な用語では印象操作とよばれています。
印象操作とは、特定の人間や組織、事柄(事象)に対して他者が抱いている印象を操作・制御しようとする目標志向的行動のことを指します。
なお、印象操作は印象管理とよばれることもあります。
印象操作と似た概念の言葉として、自己呈示というものがあります。
ただし、厳密には印象操作と自己呈示には明確な違いがあります。
自己呈示とは、他者とのコミュニケーションにおいて、自分が他者にどう見られているかを考慮し、他者からの自分に対する認知やイメージをコントロールしようとすることを指します。
自己呈示は自己演出と言い換えることもでき、自分自身のイメージや評価を低下させないための防衛的な機能があります。
ただし、自己呈示は印象を操作するという行動ではあるものの、その対象が自分自身のみであるという限定されたものです。
一方で、印象操作は自分自身以外の印象もコントロールするというものが含まれます。
いわゆる「プロデュース」というものは、他者(他社)のイメージを操作する行動であり、自分自身に向けられたものではありません(自分の印象を自分でプロデュースする場合は「セルフ・プロデュース」とよばれるものになります)。
印象を「操作」するという言葉のニュアンスから、印象操作は「悪いこと」「嘘をつくこと」などのようにも思えてしまうかもしれません。
実際に印象操作には、本心とは異なる自己を見せて他者を欺くような側面もあります。
しかし、印象操作はそういった「悪い」部分だけでなく、対人的な行動における基本過程という側面もあります。
むしろ、近年の研究では、印象操作は「他者とのコミュニケーションにおいて、ほぼ必ず実施される基本的なもの」という認識が強まっています。
より具体的な印象操作には、どのようなものがあるのでしょうか。
心理学において、フェイス・ワークというものが知られています。
フェイス・ワークとは、自分自身や他者の面子が失われるのを回避したり、すでに失われてしまった場合に、それを修復するために実施されるコミュニケーション行動のことを指します。
既に起きてしまったことに対して、その印象を操作することで、問題を大きくしないようにするという意味合いがあります。
フェイス・ワークは前述の通り、話題を逸らす・他者の失礼な態度や無作法な言動に気付かないふりをするなどの回避的なフェイス・ワークと、言い訳を中心とした修復的なフェイス・ワークがあります。
よく「第一印象が大事」などと言いますが、この第一印象も心理学で研究が実施されています。
心理学において、第一印象は人間が初対面の相手に対して抱く印象のことであり、対人関係の形成や発展にかなり大きな影響を及ぼすものであるとされています。
社会心理学者のソロモン・アッシュは印象形成に関する研究の中で、第一印象についても研究しています。
アッシュの実験によると、ある人物について初期に得られた印象に関する情報は当該人物に対する後の印象を強く規定することが分かっています。
また、容姿・視線・表情・声の調子などの非言語的なコミュニケーションが第一印象に様々な影響を及ぼすことも判明しています。
印象に関する研究には他にも様々なものがあります。
印象と心理学の関係について、興味・関心のある方は、こころ検定4級の第5章において、社会心理学の中で概観していますので、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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