交流分析とはアメリカの精神科医であるエリック・バーンによって開発された心理療法です。
バーンは精神分析療法を学ぶ過程で、精神分析が主軸とする人間の無意識や過去の経験・体験を扱うよりも「今、ここで」を重視することが必要なのではないかと考えました。
バーンは「互いに反応し合っている人々の間で行われている交流を分析すること」を目的としています。
交流分析では、心の構造や機能を記号や図式を使って分かり易く説明するという特徴があり、現実生活の中で特に対人関係上の問題を解決するのに役立てられています。
そのため、交流分析は理論構成上「精神分析の口語版」と紹介されることがあります。
これは、バーンが精神分析療法を学ぶ過程で交流分析を開発したため、根本的な部分は精神分析的な手法と共通する部分も多くあります。
ただし、交流分析は精神分析とは異なり、基本的な立場として、無意識の存在を仮定せずに「今・ここで」を重視し、自己分析と集団療法を原則としています。
従って、交流分析は精神分析に対する批判的な流れの1つでもあり、心理療法の中でも人間性心理学に含まれることが多いものとなっています。
また、心理カウンセリングとしては、技法的には精神分析よりも認知知行動療法と共通するものを多く含んでいます。
交流分析は通常、以下の4つの分析を進めていくことになります。
対象者のパーソナリティ(性格)の特徴を捉えることを目的とし、心の中に親(P)、大人(A)、子ども(C)の3つの自我状態があり、状況および各個人によって優位となる自我状態が異なると考えて分析を進める。
また、より詳細に批判的な親(CP)、養護的な親(NP)、冷静な大人(A)、自由な子ども(FC)、従順な子ども(AC)という5つのタイプで分析を進めることもある(いわゆるエゴグラム)。
2人の間のコミュニケーションの様子をP・A・C(CP・NP・A・FC・AC)の間のベクトルで分析する。
悪循環に陥った対人関係のパターンを分析するアプローチであり、交流分析の中核をなすもの。
バーンはゲームのことを「一定の周期性をもつ交流で、しばしば反復的で、表面上は合理的であるが,その奥に特定の動機を秘めているもの」と定義している。
つまり、隠れた動機を持つ者が過剰に反応しやすいところを持つ者に誘いをかけ、相手がそれにまんまと乗ってしまうという関係様式であり、徐々にエスカレートし、互いに混乱し、結末はいつも決まって嫌な感じだけが残るといったものとなることが非常に多い。
交流分析では、ゲームを断ち切ることが大きな治療効果を持つと考えられており、そのためには、特定のゲームに対するアンチテーゼ(解決法)を前もって頭に入れ、ゲームと気づいたらなるべく早目に切り上げることなどが役立つとされている。
人間が強迫的に従ってしまう人生の「脚本」の分析であり、この内容を知り、それを「今・ここで」書きかえる決断をし、新しい人生を歩みだすことが交流分析の最終的な目的となる。
バーンが提唱した交流分析では、対人関係には本人が気づかないレベルでの「良くない繰り返し」があると仮定しています。
それはパーソナリティ傾向の影響を強く受ける「対人関係のクセ」であり、このクセに気づきいわゆる「ゲームを止める・ゲームから降りる」ことで対人関係を円滑にし、コミュニケーションによるストレスを軽減させることができるわけです。
また、交流分析の1要素ではあるものの、心理検査として独立して使用されることが多いものとしてエゴグラムがあります。
エゴグラムは交流分析のアプローチに基づき、自我状態間のバランスを視覚的に表現したものです。
エゴグラムを開発したのはバーンではなく、心理学者のデュセイであり、当初は自我状態を直観的に描くことを提唱していました。
現在では、TEG-Ⅱのように標準化された質問紙が開発されており、代表的なパーソナリティ検査として、医療保険の対象となっています。
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