現在、インターネット上には非常に多くの広告が展開されています。
本来、私たちは何か探したモノ・コト、知りたいコト・モノがあって、そういった情報を手に入れるためにインターネットを利用しています。
しかし、目的とする情報を手に入れる前に、多くの「必要のない情報」を目にすることになります。
それが、無数に展開されているネット上の広告です。皆さんも、自分が調べたいことがあるにもかかわらず、広告が邪魔で目的の情報が得るのが大変だと感じたことはないでしょうか。
広告を出稿している企業や店舗からすれば、商品やサービスをユーザーに届けたいがための情報発信をしているつもりであるにもかかわらず、実際には「邪魔だ」「見てもらえない」と思われてしまっている状態なのです。
この現象は広告回避とよばれ、マーケティングなどの分野で研究されています。
より専門的には、広告回避とは、ユーザーが広告を視聴しないようにするメディア利用者のあらゆる行為の総称とされています。
15,500名に対する大規模調査の結果、回答者が雑誌広告と新聞広告の約40%を、インターネット広告・テレビ広告・ラジオ広告の約75%をそれぞれ回避してしまっているという結果が報告されています。
つまり、ネットユーザーの大半は広告を「見るべきものではない」と認識しており、積極的に回避行動をとっているということになります。
そして、この広告回避の要因として大きいのが、情緒的回避とよばれるものです。
これは、単に気持ち・感情という観点で、広告を否定的に捉えて回避するということです。つまり、心理的な要因で、本当は有益で重要な情報が含まれているかもしれない広告を「見もしない」という現象が起きてしまうわけです。
より具体的に、広告回避が発生する要因として、広告媒体への懐疑心・侵入性(本来の目的を邪魔されたという感覚)・知覚広告クラッター(ネット上の広告の数がそもそも多すぎるという認識)・負の事前経験(過去に見た広告からネガティブな出来事が発生した経験・役立たなかった経験など)などが挙げられます。
このように「嫌われ者」となってしまっているネット広告ですが、企業や店舗としては、何とか広告を多くの人に見てもらいたいと望んでいるわけです。
そこで、広告のデザインなどを工夫することで、思わずクリックしてしまいたくなる広告の作成や、AIを活用して多くのバリエーションを短時間で作成・出稿するなどが試みられています。
このような工夫の中で、特に注目を集めているのが、パーソナライズ広告です。
パーソナライズ広告とは、個人がこれまでに行ってきたネット上の閲覧履歴などから、その個人が興味・関心を持っていると想定されるコンテンツを選択的に呈示する広告手法です。
たとえば、あなたがYoutubeで特定の映画のCMを見たとすると、その履歴が活用されて、Amazonなどでのお勧め商品のラインナップに映画の原作マンガが表示されるというようなケースです。
広告回避の観点から言えば、自分の興味・関心にフィットした広告だけが呈示されるため、回避されにくい「良い広告」がパーソナライズ広告であると考えることもできます。
これは、パーソナライズ広告における「関連性」という指標で示されるものであり、広告メッセージが自己に関連したり、購買の目標を達成する際に有用であったりすると消費者が知覚する程度のことを指します。
しかし、パーソナライズ広告には「プライバシー侵害の懸念」という要素もあり、個人情報の開示を防ぐ権利が広告によって侵害されていると消費者が心配している程度を指します。
つまり、良かれと思って「あなたに合った情報」を広告として呈示しているにも関わらず、「自分のプライベートが覗き見られているようで嫌だ」という感覚が発生してしまい、広告回避が起きてしまうのです。
広告とは本来、必要な情報を必要な相手に届けるための手法なのですが、インターネットの普及によって、ユーザーは必要な情報を選びに苦労し、企業や店舗は大切なユーザーに情報を届けることができなくなってしまっているわけです。
このジレンマを解消するためには、心理学的な研究成果を蓄積し、人とネットの可能性を探り続けることが重要であると考えられます。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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