ハーバート・サイモンは1916年6月15日生まれのアメリカの科学者です。
あえて“科学者”と表現するのは、サイモンの功績は1つの分野だけに収まるものではないからです。
心理学に関しては、認知心理学や経済心理学(行動経済学)が専門領域となりますが、その他にも経営学・情報学・言語学・社会学・政治学・経済学など様々な分野に精通し、影響力の大きな理論を構築しています。
サイモンはシカゴ大学で政治学の学位を取得後すぐにシカゴ大学の研究助手としてキャリアをスタートさせます。
その後、アメリカの国際都市管理者協会に務めます。
そして、1942年にイリノイ工科大学の講師を務めながら研究を続け、1943年に政治学の博士号を取得し、イリノイ工科大学の政治学の教授となります。
このように、サイモンの初期のキャリアは政治学を中心としたものでした。
1949年にカーネギーメロン大学に移籍し、行政学と心理学の教授となります。
さらに、1955年には当時としては最先端の技術・ツールであるコンピュータに関する大学教育に従事し、コンピュータ・サイエンスの教授にもなりました。
また、1968年から1971年の間はアメリカの大統領・科学諮問委員を務めることになりました。
これを皮切りに、サイモンはこれまでの功績が華々しく評価される時期に入ります。
1969年にアメリカ心理学会の科学特別功労賞を受賞、1975年にはコンピュータ・サイエンスに関する研究が人工知能への貢献として評価されチューリング賞を受賞しています。
さらに、1978年にはノーベル経済学賞を受賞し、1986年にアメリカ国家科学賞を受賞しています。
このように、サイモンの業績は多岐にわたるものですが、特に心理学の分野に限れば、人間の認知心理学における意思決定や問題解決過程のモデル化が有名です。
これは、意思決定の先に何かを購入することや、企業の経営判断などがあり、経済心理学・行動経済学にも強いつながりのある内容となっています。
サイモンが提唱した理論として一番有名なのが限定合理性です。
人間は合理的な判断・評価に基づいた意思決定や選択行動をするはずである、というのがそれまでの経済学や心理学の考え方でした。
しかし、サイモンは人間の認知能力には限界があり、計算処理能力にも限界があるので、最も高い効用(利益)を与えてくれる選択肢を探すという最大化は成り立たず、せいぜいこれで十分だと満族のいく選択肢を探すという満足化が精一杯であると考えました。
これは人間が非合理的であるという意味ではなく、合理的な意思決定を“したい”とは考えているものの、それを実現することが非常に困難であるため、限定的な合理的活動をしているということです。
サイモンは、人間は満足化を追求するために最低限の受容水準(要求水準)をあらかじめ決めておき、選択肢がその要求水準を超えているかどうかだけを検討しているのではないかと述べました。
1つ1つの選択肢を別個に評価できるという満足化の利点は、時間の経過に伴って1つ1つの選択肢が出て来るような場合には特に有効であると考えられます。
限定合理性の考え方をより具体的に述べると以下の4つの特徴で示されます。
(1)選択肢は内生的に発見されるものであり、この発見(多くの選択肢を探しだし、それぞれの特徴を吟味する)には時間と費用がかかる。
(2)選択の結果の確率は外生的に与えられるものではなく、主観的に評価されるものであり、実際の価値ではなく認知や感情の影響を受けて決定される。
(3)効用(利益)は選択の結果だけでなく、過程からも影響されるので、効用(利益)・不効用(損失)を正確に測るのは困難である。
(4)選択肢の決定は、効用最大化(利益の最大化)ではなく、満足化によって決められる。
文部科学省後援こころ検定2級対応メンタルケア心理士(R)でもカウンセリング基本技法教本で「カウンセリングの歴史」に触れています。心理学を学習するうえで過去の研究者の研究や現代にいたる軌跡を学ぶ心理学は面白いですし、大切なことだと考えます。心理学、心理カウンセリングに興味のある方はまずはお気軽に資料をご請求ください。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。