カール・グスタフ・ユングは1875年7月26日生まれの、スイスの精神科医・精神分析家です。
ユングは当時第一線で活躍している精神科医を師匠とし、統合失調症の研究や治療に従事していました。
その過程で、ユングはフロイトと交流を持つようになりました。
しかし、精神分析に関する考え方の違いから、ユングはフロイトと袂を分かつことになってしまいます。
フロイトとの決別の際の激しい葛藤やストレスの経験を基に、ユングは分析心理学を確立しました。
分析心理学は別名、ユング心理学ともよばれており、ユングはその中で様々な概念を提唱しました。
日本には、日本ユング心理学会という学術学会があり、2018年には6月に年次大会が開催されることとなっています。
ユングが提唱した最も一般的なものとして、内向-外向の概念があります。
これは素質的な根本的態度に関する2つのタイプです。
内向型は関心が自分の内面に向かい、他者や外界と距離をおこうとする傾向が強いタイプです。
そして、外向型は関心が外界の諸事象に向かい、他者に積極的に働きかける傾向が強いタイプです。
さらに4つの心理的機能として、思考-感情、感覚-直観という分類を設定しました。
そして、個人が主として依存している心理機能を優越機能、その対にある機能を劣等機能とよびました。
また、ユングは人間の心の構造を意識と無意識に分け、さらに無意識を個人的無意識と集合的無意識に分けました。
個人的無意識には、かつて意識化されていた内容が抑圧・忘却されたものや、強度不十分で感覚的痕跡となったものが含まれます。
コンプレックスはこの領域に存在するとされており、いわゆる神経症は自我がコンプレックスに支配されることにより発生するとされています。
集合的無意識は、人間だけでなく動物にも共通する個人の心の基盤であるとされています。
集合無意識は、心像(心的イメージ)として存在し、神話・夢・妄想などに共通して認められるものであるとされています。
ユングはこれらの無意識的な共通性を産み出す源には、何らかの“元となる型”が存在すると仮定しました。
ユングはそれを元型(アーキタイプ)とよび、代表的なものもとしてシャドウ(影)、アニマ、アニムスなどを挙げており、その中には自己も含まれるとしています。
ユングは心理学的な研究を続ける中で、常に意識と無意識の相補性と心の全体性に関心をもち続けました。
そして、それを「自己」の概念としてまとめました。
その意味で、自己はユング心理学の中核的概念であるといえるでしょう。
ユングは自己を心の全体性の中心として捉えており、意識と無意識をはじめ、内在する対立的諸要素の統合を担うものであるとしています。
個性化とは、集合的無意識が徐々に意識化されてゆき、完成されたパーソナリティを持つようになるプロセスのことです。
個性化のプロセスは、各個人により異なりますが、特定の原型的な象徴の体験として把握されるものであるとしています。
意識の背後にある影(シャドウ)を体験し、さらにアニマ・アニムスと呼称される心像(心的イメージ)との出会いを経て、集合的無意識の根幹をなす元型へと進むとされています。
最終的に、極的な到達点という意味での自己そのものを体験することになるとしています。
ユングは無意識の補償的象徴の力を借りて、潜在している自らの可能性に気づき、自我の力でそれに光をあて統合するプロセスを重視しています。
また、ユングは夢分析を通じて、このプロセスの輝かしい未来を示すとともに、苦しく危険な側面も併せて指摘しました。
夢分析とは、ユングによると、顕在的夢思考そのものの中に夢の思想(無意識の固有の性質)を求めて未来へと分析を進め、夢のもつ予見的働きである(予知夢)についても検討材料とするものであると定義されています。
夢が展望を語ってくれるという立場から、ユングは心理療法の開始時に報告される夢(初回夢)を重視しています。
このように、ユング心理学は精神分析の代表的な学派として確立されており、一部ではありますが、心理カウンセリングにも応用されています。
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