コラム

こころの日と心理学の関係

2024.6.20 心理
  • 認知行動療法
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「こころの日」と心理学には、どのような概念なのでしょうか。

 

【目次】

  1. 1.7月1日は「こころの日」
  2. 2.臨床心理学
  3. 3.精神分析療法を確立
  4. 4.心的外傷後ストレス障害
  5. 5.科学者-実践者モデルの提唱
  6. 6.認知行動療法
  7. 7.まとめ

 

1.7月1日は「こころの日」

日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。7月1日は「こころの日」に制定されています。これは、日本精神科看護協会(旧:日本精神科看護技術協会)が1998年に制定したものです。
日本の法律として、1987年7月1日に精神衛生法が精神保健法に改正され、翌年の1988年に施行されました。そのため、7月1日はそれを記念して「こころの日」となっています。精神保健法は1993年に一部改正を経て、1995年に精神保健福祉法となり、現在に至っています。

 

「こころの日」は精神疾患や精神障害者に対して正しい理解を図り、こころの健康の大切さを再認識してもらうことが目的となっています。では「こころの日」と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学(臨床心理学)と精神医学は異なる学問領域として、別々の歴史があります。ただし、公認心理師をはじめとする心理カウンセラーや医師の中の精神科医・心療内科医などの心理支援職にとっては、どちらも重要な知識・技能を含むものとなっています。では、心理学(臨床心理学)と精神医学はどのような歴史を持ち、発展してきたのでしょうか。

 

2.臨床心理学

科学的な心理学の研究や実験が進められる中、1896年に心理学者のライトナー・ウィットマーが世界初の心理クリニックをアメリカのペンシルベニアに開設します。その少し後に「臨床心理学(clinical psychology)」という用語を初めて用いたのもウィットマーです。ウィットマーは世界で最初の心理学実験室を設立したヴィルヘルム・ヴントの下で博士号を取得した心理学者であり、科学者としての視点をしっかりと持った専門家です。つまり、心理カウンセリングとは最初から「心理学者の仕事」としてスタートしたものであるといえわけです。

 

3.精神分析療法を確立

ほぼ時を同じくして、1900年代初頭にヨーロッパでは近代的な精神医学の幕開けが起きていました。ジグムント・フロイトがオーストリアで精神分析についての研究・実践をスタートさせます。フロイトは無意識に注目し、抑圧や夢分析を中心とした精神分析療法を確立させました。また、フロイトは精神医学の第2の革命とされる「クライエントとの対話」を確立させた人物でもあります。この「クライエントとの対話」が、実はそれまでは、しっかりと実施されていなかったため、ここから真の心理カウンセリングがスタートしていくきっかけとなったわけです。

 

4.心的外傷後ストレス障害

第一次世界大戦後の1915年に兵士の精神的問題を心理学者のマイヤーズが砲弾ショックと名づけました。その後、この精神疾患は戦争神経症とよばれるようになり、最終的には心的外傷後ストレス障害(PTSD)とよばれるようになります。当初は戦争のみが疾患の原因と考えられていましたが、後の研究によって災害・事件・事故などのトラウマ経験は全てPTSDの原因となることが判明しています。

 

5.科学者-実践者モデルの提唱

1940年代に入ると、精神医学の分野では、精神疾患患者に対して、脳の一部を切除する精神外科(ロボトミー)が確立・普及しました。そして、1949年にエガス・モニスがその功績によりノーベル生理学・医学賞を授与されています。また、心理カウンセリングの分野では、カール・ロジャーズらによる人間性心理学・来談者中心療法の研究がスタートしています。
そして、1949年にアメリカのコロラド大学で開催された専門家会議において、科学者-実践者モデルが提唱されます。これにより、心理カウンセラーは心理学者でなければならないという世界基準が確立されます。時同じくして、1949年には、WHOが疾患の診断マニュアルであるICD-Ⅵにて、初めて精神疾患の項目を設置しています。

 

6.認知行動療法

1950年代になると、精神医学の分野では向精神薬の開発により、薬物療法が普及・発展します。それに呼応する形で、この時期に精神外科が衰退しはじめます。また、心理カウンセリングの分野では、学習心理学を背景に持つ行動療法がジョセフ・ウォルピやハンス・アイゼンクによって確立・発展したのがこの時期です。さらに、1952年には精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSMの第1版が出版されます。
1960年代にはアーロン・ベックが認知療法、アルバート・エリスが論理療法について同時期に定義・提唱ました。これらの理論・療法が1970年代に誕生する認知行動療法のベースとなっていきます。
1980年にはDSMの第3版が出版され、ここで精神疾患の操作的診断が確立されます。同時に各種心理検査も精密化が図られ、より客観的なアセスメントが実施されるようになります。そして、2000年代初頭に入ると、第3世代の認知行動療法であるACTやマインドフルネスが発展・普及しはじめます。

 

7.まとめ

このように、心理学(臨床心理学)と精神医学は共に相互に影響し合いながら、今日まで人間の「こころ」に関する研究・発展を続けてきているのです。

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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