遊戯療法とは、主に子どもを対象として、遊びを通じて行う心理療法です。
心理療法は通常、言語(音声言語によるコミュニケーション)を主たる媒介として実施しますが、子どもは大人と同じように言葉のやり取りで自分の気持を表現することがまだ十分にできません。
そこで、言語表現をあまり必要としない遊びを活用するわけです。
遊戯療法はアンナ・フロイトやメラニー・クラインによって研究・開発が実施されました。
アンナ・フロイトもメラニー・クラインも精神分析の専門家であり、精神分析の理論として「遊びは子どもの内的な世界を表現するのに最も適した方法である」という考え方が背景にあることが関係しています。
現在では、遊びを単に「言葉の代わり」ではなく、言葉では表現し尽くせない深い感情や複雑な問題状況を表現することができると考えられており、遊びの表現のもつ意義が高く評価されています。
そのため、子どもだけではなく、成人に対しても実施されるケースが増えています。
また、日本には、日本遊戯療法学会があり、2018年度は6月に年次大会が開催されています。
遊戯療法の実施には、心理カウンセラーとクライエント(子ども)以外による介入がなく、クライエント(子ども)自由に遊べる空間が必要となります。
そこで、様々なおもちゃや遊具を備えた遊戯治療室(プレイルーム)という設備が必要になります。
標準的な遊戯療法では、週1回およそ40~50分、子どもと心理カウンセラーが2人で遊戯治療室(プレイルーム)の中で自由に遊びます。
心理カウンセラーは相当な許容度をもって子どもに受容的に接し、子どもの主体的な動きを尊重して対応していきます。
そのため、子どもは「ここでは何をやっても自由であり、しかも(心理カウンセラーとの関係において)守られている」という確信を得ることができます。
この信頼に満ちた暖かい対人関係に支えられながら、子どもはありのままの自分を表現し、内的な葛藤の解決や自己成長へと方向づけることができます。
遊戯療法の基本原則はロジャーズの弟子であるアクスラインが定義しています。
アクスラインは心理カウンセラーの取るべき態度として8つの原理を提唱しています。
遊戯療法にも様々な理論的立場がありますが、立場の違いを超えて、アクスラインの提唱した原則は「基本中の基本」として確立されています。
遊戯療法の代表的なものとして、箱庭療法があります。
箱庭療法とは、ローエンフェルドの提唱した世界技法をカルフがユングの理論をベースに発展させた心理療法です。
具体的には、砂の入った木箱と様々なミニチュアが用意され、クライエントは砂の上に自由にミニチュアを並べ、また砂で山を作るなどのイメージ表現を行います。
箱庭療法は非言語的な表現技法の1つであり、日本では臨床心理学者の河合隼雄が1965年に紹介し、以後、大きく発展していきました。
箱庭療法は遊び的な要素と構成的な要素があり、子どもにも大人にも適用することができます。
一般的に子どもの遊戯療法の中で適宜、用いられたり、大人の場合は言語的なやり取りに行き詰った際に、心理カウンセラーが説明・実施(クライエントの同意の上で)していきます。
箱庭療法は心理カウンセリングだけで実施されるものではなく、言葉では尽くせないような象徴的な表現が可能で、強い情動体験を伴って治療を進展させることを目的として実施されます。
ただし、箱庭療法はクライエントの内的イメージを深く揺さぶることあり、自我の統制力の弱い精神障害やそれに類する状態のクライエントに関しては、箱庭療法は寛解期以外では禁忌であるとされています。
また、遊戯療法には、集団遊戯療法という手法があります。
基本的な遊戯療法は個人療法であるのに対し、複数の子どもに対して1人の心理カウンセラーがつく場合、複数の子どもに複数の心理カウンセラーがつく場合があります。
集団遊戯療法の具体的な方法は、集団成員の特質や心理カウンセラー側の意図・目標などによって様々ですが、集団内でのダイナミックスに治療的意義がある場合に実施されます。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。