コンラッド・ローレンツは1903年11月7日生まれのオーストリアの動物心理学者・比較行動学者です。
ローレンツは当初、オーストリアのウィーン大学の医学部に進学し、医師資格を得た後、同大学にて動物学を学びました。
その後、1922年にアメリカのコロンビア大学で医学を学んだ後、1923年にはウィーンに戻り、ウィーン大学で研究を続けました。
1928年には医学博士号を取得し、ウィーン大学の解剖学研究所で1933年まで准教授を務めました。
1933年には、医学博士号に続いて動物学でも博士号を取得しています。
1940年にケーニヒスベルク大学で心理学の教授となりました。
戦後、1950年に行動心理学ローレンツ研究所を設立、1957年にはミュンヘン大学・動物学科の名誉教授となりました。
その後、ローレンツは1958年にマックス・プランク行動心理学研究所に移籍し、1973年には、ニコ・ティンバーゲン、カール・フォン・フリッシュと共にノーベル医学生理学賞を受賞しました。
ローレンツは動物の行動は、形態的特徴と同様に、それぞれの種に固有に遺伝的に特徴づけられるという事実をスタートとして、動物が生活する実際の場面での詳細な行動の観察とその記述を行い、比較行動学(エソロジー)を確立しました。
比較行動学(エソロジー)では、動物たちがなぜそのような行動をするのか、その行動が個体と種の生活や適応にいかに役立っているか、その行動がどのように発達してきたか等を調査し、またある行動を取り上げて、様々な動物について系統発生的に比較検討することにより行動発現の機構を明らかにしようとするものです。
比較行動学(エソロジー)は比較的新しい研究分野であり、これを科学的な研究領域としてまとめあげた功績により、1973年にローレンツはティンベルヘンとフリッシュらと連名でノーベル生理学医学賞を受賞しました。
比較行動学(エソロジー)は、本質的には人間を含む動物行動の研究分野ですが、特に主として人間を対象とする時には人間(比較)行動学(ヒューマン・エソロジー)とよばれることがあります。
この分野の研究は、ローレンツの行った幼児図式の研究に始まるといわれています。
ローレンツは幼児の持つ一般的に丸い体型・身体に比較して大きな頭・丸々とした手足や頬などの形態的特徴は、人間のみならず他の動物の幼体とも共通する特徴であり、この形態的特徴に加えて子どもらしい行動や匂いなどの特徴が成人・成体に「かわいらしい」とか「愛らしい」という感情や気持を起こさせることを指摘し、これが人間における生得的解発機構(IRM)の一例であると述べました。
その後、ローレンツの弟子であるアイブル・イベスフェルトは、欧米のみならずアフリカやアジアなどの多様な文化の中に生活する人間に共通する表情を手がかりとして、人間における生得性の研究を行い、人間(比較)行動学をさらに発展させました。
ローレンツは1973年にノーベル生理学医学賞受賞しましたが、この研究成果は多方面に影響をもたらしました。
その中でも、攻撃的な行動の意味については大きな影響力を及ぼしました。
ローレンツは、攻撃は最も根源的な本能であり、時々その衝動を解放しないと暴発の恐れがあると考えました。
従って、解発刺激のない状態で生得的解発機構が働き、種に固有な行動が発現する真空活動の存在を指摘しました。
また、攻撃が破壊的になることを抑制するメカニズムとして、歯・牙・羽・角などの誇示行動や威嚇・服従・融和行動、さらに儀礼的闘争などが進化したと考えました。
ローレンツは闘争の生物学的機能を強調しましたが、攻撃動機づけが攻撃本能に由来する内的衝動説を提唱しました。
ローレンツは脳内の攻撃中枢を仮定し、また,内的衝動と外的刺激の2要因からなる水圧モデルを用いて攻撃反応のメカニズムを説明しようとしました。
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