生理心理学は生理学的な方法を用いて、実証的・客観的レベルで主に人間の心理的過程を研究・解明しようとする研究分野です。
日本には、日本生理心理学会があり、精力的に研究活動が進められています。
2018年度は5月に日本生理心理学会の年次大会の開催が予定されています。
生理心理学の研究には、いくつかのアプローチがありますが、大きく分けると
1.自律神経系・中枢神経系の活動を測定する方法
2.脳に関する機能・作用について測定する方法
とがあります。脳や神経は人間の精神状態の影響を受けて反応するものです。
また、逆に脳や神経の反応が私たちの「心」を形作っているともいえます。
人間の心理的過程は、主に知覚・認知・感情・行動で示されるものです。
知覚は「目で見る」「耳で聞く」というように五感に関するものですが、知覚した出来事は最終的には脳に伝えられます。
そして、知覚された出来事に対する判断・評価が認知であり、これも脳の重要な機能の1つです。
出来事が自分にとって都合が良いと判断されればポジティブな感情が生まれ、都合が悪いと判断されればネガティブな感情が生まれることになりますが、感情は神経伝達物質の分泌によってコントロールされていることが多いものです。
最終的に何らかの行動を起こす場合に、腕を上げる・歩く等は全て脳からの指令が神経を通じて身体各部位に伝わることで「行動」として成立します。
このように、知覚・認知・感情・行動の背景には、脳・神経が関わっていることが多いので、生理心理学の知見は実に様々な分野に強い影響力を持っているといえます。
より具体的な生理心理学の研究としては、人間の心理的状態を客観的・実証的に捉えるために、自律神経系の反応(心拍数・皮膚電気活動・呼吸・容積脈波など)を測定することが挙げられます。
また、測定機器の進歩によって、人間の脳や中枢神経系の活動を非侵襲的な方法(脳波・誘発電位・事象関連電位・誘発脳磁界・局所血流量など)で直接測定するという手法が非常に発展してきています。
脳や中枢神経系の測定は、刺激入力から反応出力までの間の心理過程・情報処理過程の解析に重点が置かれています。
また、近年では同様な目的のために、眼球運動・眼瞼反射・筋電図などの末梢的反応の測定を行うこともあります。
この分野は特にアイカメラ等の精密機器が開発・実用化されたことで、盛んに研究が実施されており、精神疾患の診断等への応用が期待されています。
生理心理学から派生したものとして、神経心理学や行動薬理学という分野があります。
神経心理学は脳損傷患者を対象とすることが多いものです。脳の特定部位に損傷があることで、損傷前に実行できていたことが上手くできなくなった場合、それは脳の特定部位が何を司っていたのかが明らかになります。
行動薬理学は動物を対象として、脳部位の破壊や機能的損傷によって、たとえば、条件づけ学習の脳内の実証的なプロセスを解明することができます。
生理心理学・神経心理学・行動薬理学は心理学が基盤となっている部分が多いですが、研究対象が脳内の領野や核、神経回路、シナプス、あるいはもっとミクロな生物物理的なレベルとなる場合は、大脳生理学や認知神経科学とよばれます。
いずれにしろ、これらの分野は私たちの「心と身体のつながり」について明らかにしていくことを目的としているという点では共通しています。
生理心理学は人間の【身体】・【精神】のつながりを正確に理解し、それを数値化・可視化して、誰でも自分の現在の状態を分かり易い方法で確認できるようにすることを目指しています。
身体状態・精神状態の正確な数値化・可視化は、病気の診断や治療だけではなく、予防においても非常に重要な示唆を与えてくれるものであるといえるでしょう。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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