コラム

政治心理学とは?

2023.2.2
  • アナウンスメント効果
  • 政治心理学

心理学には、政治心理学という分野があります。
では、政治心理学とはどのような学問分野なのでしょうか? 

 

 

心理学の応用分野として、政治心理学という分野があります。
政治心理学では、心理学的手法による政治現象の解明を目的としています。
たとえば、政治的態度・イデオロギー・世論・投票行動・集合行動・政治的社会化・政治的指導者のパーソナリティやアイデンティティなど、非常に多くのテーマが政治心理学の研究には含まれています。政治心理学的な発想自体は古くからあり、マキャヴェリやホッブズやロックらの著名な思想家も注目していました。

 

また、関連する領域として、社会心理学にも、政治心理学の要素が認められます。政治心理学の本格的な研究は、20世紀初頭の人間の非合理性に関する研究は、1940年代に実施されたました。
権力とパーソナリティに関する精神分析的解釈などが挙げられます。 

 

では、より具体的に政治心理学について解説していきたいと思います。
まずは、イデオロギーというものについてです。
イデオロギーとは経済的・政治的構造に規定される精神文化的形態のことを指す用語です。
イデオロギーは人々が自然・人間・社会を認識する際に、枠組として機能するものであり、社会的イデオロギーと個人的イデオロギーの2つがあります。
 

続いて、世論というものも科学的に検討されています。
世論に関する定義はいくつもあるのですが、最も有名なものとしては「公共的に重要性のある争点をめぐって、多数の人々によって表明される意見(選択肢)の集合体」というものがあります。
 

 

政治心理学の領域において、世論とは投票行動や政治的態度、アナウンスメント効果といったテーマのもとに多くの研究が行われています。 

 

投票行動とは、選挙における候補者や政党、各種政策、選挙の争点に関する複数の選択肢について、集団の合意を形成するために賛否や選好を表明する行動であると定義されています。
そして、投票行動は現在の社会制度における最も基本的で一般的な意思決定・政治参加の形態であるとされています。
投票行動に関する本格的な心理学的研究は1940年代にアメリカで開始されており、その後、アメリカのコロンビア学派による社会的属性やミシガン学派による社会心理学的要因の検討を経て
、1960年代には短期的要因と長期的要因からなるミシガン・モデルが構築されるなど発展をしています。
ミシガン・モデルは政党帰属意識が投票を強く規定することや、争点投票がなされないことを示されました。

しかし、1970年代には争点投票が科学的に実証され、1980年代には業績投票モデルというものが提唱されています。
さらに、現在では従来の研究に加えて、政党や候補者に対するスキーマを説明変数とする認知科学的研究や、選挙キャンペーンによる政党・候補者イメージの操作や政治広告の効果に関する研究、ニュース報道などによるアナウンスメント効果に関する研究などが盛んに実施されています。
 

さて、本コラムで何度が出てきているアナウンスメント効果も、政治心理学における重要な要素の1つです。
アナウンスメント効果とは、投票行動研究の用語であり、候補者の当落や政党の議席の増減について世論調査に基づく予測や観測報道をすること(アナウンスメント)が、当落や議席増減に影響を及ぼすことを指します。
このアナウンスメント効果の影響力が過大視される場合、それが政治問題化してしまうこともあります。
アナウンスメント効果の影響の方向には、バンドワゴン効果とアンダードッグ効果という2つがあります。
バンドワゴン効果とは、アナウンスメントによって有力な候補者や政党に対する票が増大することを指し、アンダードッグ効果とは逆に不利な候補者に対する同調的な票の増大を指します。
これらの現象がどれだけ生じているか世論調査などを通じて検討すると、特定の候補者や政党に特定の方向に票が移動する現象は観測されにくく、全体として影響の方向は相殺されやすいとされています。

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。
医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

 

関連記事