キューブラー・ロスは7月生まれの著名な精神医学の専門家です。
心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、7月生まれの著名な先生方がいます。エリザベス・キューブラー・ロスは1926年7月8日生まれのアメリカの精神科医です。キューブラー・ロスは、スイスのチューリッヒで生まれ、最初は医師ではなく検査技師として、医療機関で働いていました。そして、1957年にチューリッヒ大学の医学部を卒業し、翌年の1958年にアメリカに移住しています。
キューブラ―・ロスの功績として最も有名なのは死の受容プロセスに関する理論・仮説を提唱したことです。これは、心理学において、特に老年心理学の分野で研究・教育が進められています。近年、発達心理学では超高齢者化社会を念頭に置き、65歳以上の人々の心理についても研究対象としています。そして、さらにその「先」という観点から、死や死の直前の人間の心理についても研究が進められています。そのため、キューブラー・ロスの死の受容プロセスに関する理論・仮説は、こういった分野の基礎となる内容となっています。
キューブラー・ロスの死の受容プロセスとは、具体的には以下のようなものとなっています。
1. 否認・隔離:自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階
2. 怒り:なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階
3. 取引:何とか死なずにすむように取引をしようと試みる段階。何かにすがろうという心理状態
4. 抑うつ:落ち込んでしまい、何もできなくなる段階
5. 受容:最終的に自分が死に行くことを受け入れる段階
この死の受容プロセスに関する理論・仮説は『死ぬ瞬間』(1969年)という書籍において、まとめられています。
キューブラー・ロスが死の受容プロセスを研究・提唱した背景には、自身の経験が活かされています。キューブラー・ロスは医療従事者として活動する過程で、医療機関において死に瀕している患者への対応に疑問を感じることが多くなりました。そこで、病気の患者をどう扱うべきなのかという内容の研究や教育をスタートさせました。これは1961年に「死と死ぬことについて」という講義として発展していきます。そして、1963年にはコロラド大学で精神科医としての資格を取得し、1965年からシカゴ大学・医学部に移り、臨床的な研究にも着手しています。キューブラー・ロスは死をテーマにして20冊もの専門書を執筆し、世界各地で数多くの講演なども行っています。そんな、キューブラー・ロスの業績に対して、複数の大学から20もの名誉博士号を授与されています。
また、キューブラー・ロスは自身の私財を投じて死に向かう患者のためのセンターを開設し、精力的に活動も行っています。現在、この活動はホスピス運動の先駆的なものとして考えられています。多くのホスピス運動の活動家たちは、キューブラー・ロスによってホスピス運動が確立されていったと賞賛しています。
キューブラー・ロスは2004年に逝去しました。晩年には、エイズ患者との関りを深めており、エイズ患者のための新たなセンターの開設を計画していました。
キューブラー・ロスの一連の研究は死への準備教育(death education)の代表的なものとしても確立されています。死への準備教育とは、人間らしい死を迎えるにはどうすべきか、に関する教育のことを指します。人間、誰しも必ず訪れる「死」を見つめることによって、限り有る「生」を充実させることを目的とする内容が多いです。キューブラー・ロスの研究も最終的に「死を受容する」というゴールに向かっていくものとなっています。
キューブラー・ロスによる死の受容プロセスについては、こころ検定3級の第1章において概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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