コラム

心理学における非行とは

2020.4.23
  • 不適応性非行
  • 犯罪心理学

非行という行動について、心理学ではどのように捉え、対応をしているのでしょうか。
心理学では発達心理学・社会心理学・犯罪心理学の観点から検討されています。

 

 

 

非行とは、社会的な規範に反する行為を総称する概念です。
英語表記では「juvenile delinquency」であり、これを日本語に訳すと「非行」となります。非行という用語自体は、少年法が制定された1948年以降に広く用いられるようになりました。

 

日本における少年法は、少年の健全な育成を期するために、非行のある少年に対して保護処分を行うことを定めています。
同法第3条1項では、家庭裁判所の審判に付すべき少年を「非行少年」としており、以下の3つの類型を総称するものとなっています。

 

(1)犯罪少年:14歳以上20歳未満の罪を犯した少年
(2)触法少年:14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年。
14歳に達していないので刑事責任を問われないため「犯罪」ではなく「触法」とする

(3)虞犯少年:以下のような行動・行為をする少年。
その性格または環境に照らし、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年。
まだ、実際に罪に問われること、法に触れることをしているわけではなく、その危険性(被害者・加害者の両面)の高い状態

 

1.保護者の正当な監督に服しない性癖のあること

2.正当の理由がなく家庭に寄りつかないこと(家出)

3.犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際し、またはいかがわしい場所に出入りすること

4.自己または他人の徳性を害する行為をする性癖のあること

 

当然ですが、全ての少年少女が非行に走るわけではありません。
では、非行は何が原因で発生するのでしょうか。
非行の原因については、犯罪心理学や犯罪社会学等の分野で古くから多くの研究がなされています。
代表的なものとして、以下の3つがあります。

(1)素質的要因

20世紀初頭の犯罪研究の初期において、犯罪心理学者のロンブローゾは「生来的犯罪人説」を提唱しています。
また、ゴダードは知能と非行の関係について検討しています。
しかし、現在では、この素質的・遺伝的な要素は絶対的なものではないことが判明しています。

(2)パーソナリティ的要因

ある種の性格の偏りが非行に結びつくという考え方であり、シュナイダーは「自己または社会が悩むような人格」を精神病質人格とよび、抑うつ型・自己不確実型・情性欠如型・自己顕示欲型など10種類の類型を提唱しており、これが現在のパーソナリティ障害の原型となっています。

(3)環境的要因

少年を取り巻く環境としての、学校・職場(中学卒業で社会人となるケースを含む)・地域社会・家庭などに検討を加えるものです。
特に家庭的な要因については、貧困やひとり親家庭の問題、親子関係の特徴と非行の関連などについて、様々な立場から多くの研究が続けられています。

 

 

非行の原因は上記のようなものですが、非行に至るメカニズムについては、また別の要素が関係しているとされています。

 

心理学者の水島恵一は、

 

①不適応性の機制

②感染性の機制

③非行機制の相互作用

 

の3点について指摘し、非行を捉えようとしています。
水島によれば、フラストレーションや葛藤に対する反応が生む不適応性非行と、非行集団などに適応することで非行文化を取り入れる感染性非行とがあり、こうした二元論を前提とした上で、双方の相互作用が高次の非行を生むとしています。

 

このような非行に対する適切な対応として、非行の予防と非行少年に対する処遇という“2本柱”があります。
家庭や学校、地域の青少年団体などの非行防止活動も近年活発に行われています。

 

非行にかかわる機関としては、家庭裁判所・少年鑑別所・保護観察所・少年院・児童相談所・児童自立支援施設・警察・少年補導センターなどがあり、それぞれの役割や機能を果たしつつ、連携をとりながら、少年の健全な育成のための指導・援助等を行っています。

 

非行は、少年少女自身にとっても周囲にとっても、否定的に認識されやすいものです。
しかし、思春期という心と身体の発達が急激かつ不調和な時期に現れることに着目し、非行を少年の成長・発達の過程として捉えることが必要であり、少年の将来に向けて積極的な意味づけができるようにかかわることが重要となります。

 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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