パーソナリティ心理学と産業・組織心理学の接点として、職業と性格傾向の関連が挙げられます。
人間のパーソナリティ(性格)と職業選択や職業適性には密接な関係があることが、心理学的な研究から判明しています。
職業については、まずどのような業種に興味・関心があるのかということが重要です。
そこで、心理検査の1つとして、職業興味検査があります。
職業興味検査とは、個人が特定の職業活動に参加することを好む程度を測定する検査です。
職業興味検査で測定される様々な職業活動に対する受容もしくは拒否の構え、好き嫌いの感情は、能力やパーソナリティ(性格)とともに職務を遂行し、職業に適応していく上で重要な要因となります。
そのため、職業指導においては、自己理解を深め、将来の進路について考えるきっかけとし、また、実際の職業選択の手がかりとするために職業興味が測定されます。
代表的な職業興味検査には、産業・組織心理学者のストロングが開発したストロング職業興味検査のように特定の職業集団の持つ興味傾向を基準とし、それとの一致度を見るものがあります。
また、同じく産業・組織心理学者のホランドの開発した6つのパーソナリティ・タイプ(現実型・研究型・芸術型・社会型・企業型・慣習型)のどれかを学習し、そうしたパーソナリティ・タイプを受け入れやすい職業環境を志向するという理論に基づいた検査などがあります。
ホランドは「ホランドの六角形モデル」という概念を提唱しています。
ホランドの六角形モデルは、職業選択はパーソナリティ表現の1種と定義し、職業に対する興味はパーソナリティ特性を反映されるとしています。
また、職業的ステレオタイプが重要であるとし、同職の人間のパーソナリティ特性は似ており、同職者は似た反応を示し、似た対人関係を構築するとしています。
そして、職業満足度等はパーソナリティと環境の一致度によって決まるとされています。
ホランドは個人のパーソナリティ特性が職業興味や職業適性と強く関係し、同時に特定の職業・職種に適したパーソナリティ特性があると述べ、パーソナリティ特性を①現実型 ②研究型 ③芸術型 ④社会型 ⑤企業型 ⑥慣習型の6つのタイプに分かれるとしています。
各タイプは以下のような特徴があり、それぞれ“向いている職業・業種”が挙げられています。
①現実型:道具・機械を対象とした秩序的・組織的な業務を好むが、教育的・治療的な業務を嫌う。 農業・林業・漁業・製造業・工業などに適性がある。
②研究型:物理・化学・生物・文化等の理解・制御のための観察・記述による体系的・創造的な業務を好むが、交渉的な業務を嫌う。科学者・研究者などに適性がある。
③芸術型:物・言語・人間性に関する素材のコントロールを伴う芸術的・創造的な業務を好むが、具体的・体系的・秩序的な業務を嫌う。美術家・音楽家・俳優などに適性がある。
④社会型:情報伝達・教育・治療・啓蒙を伴う対人接触的な業務を好むが、道具・機械による秩序的な活動を嫌う。医師・教師・カウンセラー・介護士などに適性がある。
⑤企業型:組織目標達成や経済的利益獲得のための他者(他社)との交渉的な業を好むが、観察・記述による体系的・創造的な業務を嫌う。営業職・管理職などに適性がある。
⑥慣習型:組織目標達成や経済的利益獲得のための具体的・秩序的・体系的なデータ操作業務を好むが、非体系的・探索的な業務を嫌う。事務職・会計職などに適性がある。
このように、ホランドの理論に基づいて開発された職業興味検査は、企業の人事や採用において活用されています。
仕事の向き・不向きはストレスにつながりますが、適性のある仕事・職場で活躍することでストレスの少ない生活が送れるわけです。
産業・組織心理学については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストである、精神予防政策学にて概説しているので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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