心理学や人間工学において、仕事上のミスのことをヒューマン・エラーとよんでいます。
広い意味では人間の失敗を意味する用語ですが、事故防止の観点から、その発生メカニズムの解明およびその効果的な防止策の構築が産業場面における課題となっています。
学術的な定義としては「システムによって定義された許容限界を超える一連の人間行動」や「計画された心理的・物理的活動過程において、意図した結果が得られなかった際にその失敗は他の出来事によるものでない場合を包含する一般的用語」というものです。
前者は人間をシステムの構成要素として捉え、外部環境の改善等からシステムの許容範囲を広げることでエラー低減を図るという人間工学的な要素の強い定義で、後者は人間の個人内の計画・意図から行為に至るまでの心理的プロセスに焦点を当て、その発生メカニズムの理解からエラー低減を図ろうとする心理学的な要素の強い定義ということができます。
仕事に関するストレスとして、単に残業時間が長いというだけでは、ストレスはそこまで増加しないことが研究の結果、判明しています。
実は時間という要素に加えて、仕事のコントロール感が重要であることが判明しています。
コントロール感とは、仕事について、自分のペースで進められるか、優先順位を自分で決められるか、などを指します。
2015年から実施されているストレスチェックにおいても、仕事の量的負担(時間)と仕事のコントロール度の2つから、高ストレス者の判定などや、組織分析を行っています。
つまり、どんなに残業時間が長くても、自分のペースで自由な優先順位で仕事をこなせていれば、そこまでストレスは高くならないわけです。
逆に、どんなに仕事の量が少なくても、自分では一切、自由がなく、他の人が決めたことに全て従ってスケジュールが組まれてしまったら、ストレスが高くなるということになります。
仕事の量と仕事のコントロール感を「掛け合わせる」ことで、「真の仕事のストレス」を測定・評価できるという研究結果は様々な場面で活用されており、代表的なものとしては、2015年から義務化された
仕事のミスと残業時間やコントロール感の間にも、関連が強いということも研究の結果、判明しています。
コントロール感が低いということは、モチベーションの低下につながり、集中力の欠如などの問題につながります。
また、コントロール感が低いということは、慣れない仕事を自分の意志とは無関係にやらなければならないということでもあるため、ミスの増加にもつながると考えられます。
また、残業時間が長いということは、イコール、起きて働いていた時間が長いということになります。
研究の結果、人間は通常、起床から13時間経過した段階までは、人間の作業能率は高い水準を維持します。
つまり、朝の6時や7時に起床したとすれば、夜の7時から8時くらいまでは問題なく仕事をこなすことが可能であるということです。
しかし、13時間を越えると急激に作業能力が低下していき、17時間が経過した時点でアルコールを摂取し酔っ払っているのと同様の状態になります。
朝の6時や7時に起床した場合、夜の11時や12時の段階において、もはや仕事が満足に遂行できない状態になってしまうということです。
また、睡眠不足の状態が続くと3日目に大きな影響が出るようになり、仕事の作業効率の悪化だけでなく、ストレスによる身体・精神への影響が深刻化することも判明しています。
そのため「ノー残業デー」を水曜日に設定している企業が多くなっています。繁忙期で、どれだけ残業時間が多かったとしても、月・火と2日連続で13時間を超えるような勤務になったとしても、水曜日に残業ができないルールなら、3日連続にはならずにすみます。また、翌日の木曜・金曜と連続して13時間を超えるような勤務状態になっても、土日を挟むことでリセットされるので、やはり3日連続にはならないわけです。
仕事と心理学、仕事とストレスの関係については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストである精神予防政策学の第2章で概観していますので、興味・関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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