私たちの記憶は、段階と容量という意味で、3つの種類あり、これらは、それぞれ異なる「箱」のような構造になっています。
そして、それぞれの箱から次の箱へと情報を移動させていくという機能を持っています。
1つ目は感覚記憶とよばれるものです。
私たちは目や耳で収集した膨大な情報をまずは一旦、感覚記憶という名の「箱」に入れます。
この「箱」はものすごく広くて深いため、全ての情報を取り込むことができます。
ただし、「箱」は大きいものの、約1秒程度で、「底が抜ける」という構造になっています。
つまり、膨大な情報を一時的に全て取り込むだけの場所が感覚記憶なのです。
感覚記憶に取り込まれた情報のうち、注意を向けた情報・重要だと思われる情報のみが、次の段階である短期記憶に移されます。
また、短期記憶には単に情報の記憶に関するものだけではなく、情報処理機能としての記憶であるワーキングメモリーがあります。
これは、読書や作業などの状況において、既に自分がやったことのある記憶を参照したりすることで、情報処理のスピードを上げる機能を有しています。
短期記憶自体は、数十秒程度しか記憶が保持できないのですが、ワーキングメモリーの機能によって、読書や勉強などの「直前にやったことを覚えて利用する」という必須のスキルが発揮できるわけです。
さらに、ワーキングメモリーの機能によって、私たちは次の段階である長期記憶へと情報を移すことができます。
長期記憶とは、いわゆる私たちが普段「記憶」とよんでいるもののイメージです。
短期記憶から長期記憶へと移された情報は、ほぼ永久に保持されます。
そして、長期記憶には大きく分けて、3つの種類があります。
1つ目は、エピソード記憶というものです。
これは「昨日、私は夕食にステーキを食べた」のように、自分自身が経験・体験した過去の出来事に関する記憶です。
2つ目は意味記憶とよばれるものであり、これは単語の意味などを辞書的に覚えているというものです。
そして、3つ目は手続き記憶とよばれるものです。
手続き記憶とは、クロールによる泳ぎ方や自転車のこぎ方などのように、身体の動かし方に関する記憶です。
これらの身体の動かし方についても、一度、覚えてしまえば生涯、忘れることがないものなので、長期記憶に分類されます。
記憶には学術的な分類としても様々なものがあります。
たとえば、記憶について、言葉で説明できるのか、できないのか、という分類です。
エピソード記憶と意味記憶は、言葉で他者に明確に説明することができるので、宣言的記憶とよばれます。
一方で、泳ぎ方や自転車のこぎ方などは、身体では分かっていても、いざ言葉で説明しようとしても難しいので、手続き記憶は非宣言的記憶とよばれています。
もう1つの分類として、過去の記憶と未来の記憶という観点があります。
記憶というと、全てが過去のものと考えがちですが、実は「未来に対する記憶」というものもあります。
過去に関する記憶は、前述の意味記憶・エピソード記憶・手続き記憶が該当します。
これらは全て過去に情報として取り入れたものになります。
そして、これとは異なるのが展望記憶とよばれるものです。
展望記憶とは、たとえば「明日は燃えるゴミの日だから、朝、会社に行く前にゴミを出そう」というようなものです。これは明日の朝の「予定」であり、まだ経験・体験していないものなので、過去の記憶ではなく、先々の行動計画に対する記憶なのです。
記憶に関する認知心理学をメインとした知見は、こころ検定4級の第2章やこころ検定2級(メンタルケア心理士)のテキストである精神解剖生理学基礎の第4章で概観していますので、ご興味・ご関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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