QOLとは、「クオリティ・オブ・ライフ」の頭文字をとったものであり、生活の質と訳されます。
QOLは私たちの送っている生活の向上についての評価基準となるものです。
QOLは、物質的な豊かさだけでなく総合的に判断されるものです。
物質的な豊かさは、収入や資産についての金銭的指標によって測ることができますが、それがそのまま、私たちの生活における満足度や幸福度に直結するわけではありません。
QOLは私たちの消費に関する意識や行動を検討する際に利用されることもあります。
また、医療や福祉のサービスのあり方を考える上でも、重要性の非常に高いものとされています。
精神疾患のクライエントに対する心理アセスメントとして、抑うつ・不安などの低下・減少を確認することが多くあります。
一方で、身体疾患に伴う精神的苦痛、慢性疾患の治療長期化に対する不満、外科的外傷後のリハビリによるストレス、高齢者の各種能力低下や疾病頻度増加に伴う日常生活への影響などについては、的確なアセスメントが困難なことが多いとされています。
たとえば、糖尿病の場合、血糖状態の良好さが病気の改善の指標となるが、血糖状態が良好であっても、生活における自己管理の困難さ等に対して苦痛を感じている患者も多く、必ずしも「血糖状態が良好 = 心身ともに健康」ではないということです。
従って、疾患そのもの改善・治癒の評価とは別に、疾患から派生する心理社会的な問題の改善についても評価しなければ、患者が「真の意味で健康」であると判断することは困難となります。
そこで、疾患の改善・治癒の評価と並行して、特に心身医学等の現場では、QOLを総合的な健康状態の指標として用いることが多くなっています。
例として、めまいを発症している高齢者、人間ドック利用者、終末期ガン患者などに対して、医学的な治療・支援の効果量とは別に、患者の「真の健康」についてQOLを測定することで評価するということが実施されています。
QOLを測定・評価する方法で自己評価による質問紙形式の心理検査として、WHO QOL26というものがあります。
WHO QOL26は、その名が示す通り26問の質問項目からなる心理検査であり、医療保険の対象にもなっています。
WHO QOL26はQOLを総合的に把握することを目的としており、身体的領域、精神的領域、社会的関係、環境、全体という5つの尺度から、総合的にQOLを評価することができます。
WHO QOL26の最大の特徴ともいえるのは、環境という尺度が設定されていることです。
この環境という尺度は、居住環境や性生活、経済状態や地域の治安の状態、医療福祉サービスの利用しやすさ、交通の便利さなど、まさに「生活の環境」について把握することができます。
これは、他の心理検査にはない尺度であり、生活環境が私たちの身体・精神にどのような影響を及ぼすのかを理解する上で、非常に重要なものとなります。
QOLは医療・心理の現場で活用されることは多いものの、「脇役的」・「補足的」に利用されることが多く、なかなか注目されることが少ないという現状があります。
そこで、2017年に開催されたメンタルケア学術学会の第15回大会では、このQOLをテーマに様々な講演が実施されました。
大会では、薬物療法・薬剤の使用、運動習慣や食(摂食障害)について、QOLという観点から講演が実施されています。
また、研究発表として、様々な心身の不調のうち、特にQOLの低下に影響を及ぼす要因は何であるかを検討したものがありました。
そこでは、目や耳の不調などが特に私たちのQOLを低下させる要因として大きな影響を持っていることが示唆されています。
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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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