心臓と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。9月29日は「Heart Safe Cityの日」に制定されています。これは、健康と生活の向上にテクノロジーで貢献する株式会社フィリップス・ジャパンが制定したものです。9月29日は世界心臓連合(World Heart Federation)によって定められた「World Heart Day」であり、これがきっかけとなって日本でも記念日となっています。日本では毎年約7万人が心臓の異常からくる心臓突然死によって亡くなっていることから、地域社会や行政、関係施設などと協力し、イベントや企画などを通じて心臓疾患からの社会復帰率の向上を目指した町づくりをサポートすることが目的としています。
では、心臓と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
まず、心臓は自律神経でコントロールされているということが重要です。自律神経は交感神経と副交感神経に分かれており、興奮やストレスでは交感神経が、休息・リラックス・睡眠では副交感神経が活性化します。心臓もこの交感神経・副交感神経によってコントロールされているので、ストレスやリラックスの指標として、心臓の動きを指標として活用することができます。特に心拍変動解析(HRV)は1000分の1秒の細かな心拍の動きを数値化することができます。これにより、心拍センサーから自律神経の状態を測定・評価し、リアルタイムでストレスやリラックスを客観的に把握することが可能となっています。この心拍変動解析の技術は生理心理学・健康心理学の分野で活用されていますが、最近では産業・組織心理学や臨床心理学の分野でも活用が進められています。
現在、スマートフォンやタブレットなどを利用し、小型・軽量・無線のウェアラブル心拍センサーによって、簡単にストレスを数値化して客観的に捉えることができるようになっています。心拍変動解析という手法自体は1965年から既に研究論文が発表されており、非常に豊富な科学的エビデンスに裏付けされています。しかし、2000年代に入るまでは、医療機器である大型・超重量・有線の心電計しか存在しなかったため、あくまで医療機関や医科大学で研究されているものでしかありませんでした。近年、ウェアラブル・デバイスの開発・普及により、医療機器ではないものの、それと遜色ない正確なデータが手軽に収集できるようになりました。ウェアラブル・デバイスは全世界で2億2,390万台、日本国内では1,310万台使用され、国内の普及は2012年から2017年までの6年間で約240倍となっています(総務省:平成27年版情報通信白書)。多機能なうえに多くの機器の価格が1~数万円程度と安価なこと、労働安全衛生法の改正(ストレスチェック制度)も追い風となり、個人ユーザーに加えヘルスケア産業や企業の健康管理など利用者はさらに増えると推測されています。
また、心理療法の一種にバイオフィードバック療法というものがあります。バイオフィードバック療法は生理心理学的な観点から、自分自身の心身の状態をクライエントにリアルタイムで見せることで、リラックス状態を作り出していくという療法です。バイオフィードバックという用語は、個人の単独あるいは複数の生理反応に関する情報を視覚・聴覚・触覚など知覚可能な刺激に変換して本人に呈示することにより、生理心理学的な観点から状態を把握し、自己調節を促進しようとするアプローチのことを指します。バイオフィードバックは、当初は大型の機材やモニターを利用して、自身の生理状態を対象者本人に見せるという手法が取られていました。現在では、タブレットやスマートフォンなどを活用して、WifiやBluetoothによる無線でのデータのやり取りが可能となり、より身近で、より簡単に実施できるようになってきています。
そして、心拍変動解析とバイオフィードバックを組み合わせたのが、心拍変動バイオフィードバック(HRV-BF)です。他のバイオフィードバック療法と同様に、心拍変動の状態をリアルタイムでモニタリングし、これをクライエントに見せ、呼吸などをコントロールさせてリラックス状態を“学習”させていきます。心拍変動バイオフィードバック(HRV-BF)も盛んに研究が進められており、ストレス低減や精神疾患の治療・支援において効果を発揮しています。
このように、心臓と心理学には心理カウンセリング・メンタルへルスの分野において、非常に密接な関係があるのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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