ロボットと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
最近、私たちの生活の中にロボットが普及し始めています。
身近なところでいえば、犬型のロボットのアイボ、人型のロボットのアシモやペッパー、お掃除ロボットのルンバなどが有名です。
また、飲食店ではコロナの影響もあり、極力、人間同士の接触を減らすために、食器を下げるためのロボットが導入されているケースもあります。
このように私たちの生活に浸透しつつあるロボットですが、そもそも、ロボットとはどのように定義されるものなのでしょうか。
元々、ロボットという言葉は1920年に当時のチェコスロバキアの小説家であるカレル・チャペックが発表した戯曲『R.U.R.(ロッサム万能ロボット商会)』であり、ここで世界で初めて使われたものです。
この作品の中で、ロボットは人間とは異なる組成の肉体でありながら、人間そっくりの外見を持つものとして登場し、化学的合成で原形質を使って製作したものであると述べられていました。
そして、ロボットという言葉自体は、チェコ語で強制労働を意味するrobota(ロボッタ)と、スロバキア語で労働者を意味するrobotnik(ロボトニーク)から創られた造語なのです。
この言葉自体は作者であるカレル・チャペックではなく、兄のヨゼフ・チャペックが創ったとされています。
『R.U.R.(ロッサム万能ロボット商会)』は日本でも翻訳されており、1923年に出版されています。
ただし、最初に日本語に訳された際はロボットの部分を「人造人間」と訳され、本のタイトルもそのものずばり『人造人間』として出版されています。
実際にロボットという言葉が訳書の中で使われ始めたのは、戦後以降であるといわれています。
『R.U.R.(ロッサム万能ロボット商会)』から誕生したロボットは、現在では「動物や人間に似ており、自身で移動ができ、複雑な動作を行うことができる機械」や「自動的に複雑な動作を正確に繰り返し行うことができる装置」などのように定義されています。
では、ロボットと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
ロボットに関する心理学的研究には様々なものがあります。
その1つが、ロボットを人間がどのように捉えているのかというものです。
子どもや赤ちゃんを対象とした発達心理学・認知心理学に関する研究では、ロボットをコミュニケーションの相手として、どのように認識するのかが研究されています。
研究の結果、予め人間とロボットが会話をしている様子を提示することで、赤ちゃんはロボットと人間を同じくらい注意を向けるということが判明しています。
発達心理学の研究では、赤ちゃんがどのくらい対象に注目するのかという時間を計測することで、興味・関心・理解の程度を分析するという手法がよく用いられます。
この研究でも同様の実験が実施されており、赤ちゃんでもロボットをコミュニケーションの相手として認識していることが判明し、また、ロボットには何らかの目的があるのではないかという認識も、赤ちゃんにも可能であるということも判明しています。
人間にロボットに親近感を感じるかどうかは、見た目や動作などに影響を受けることが判明しています。
しかし、私たちはほんの少しでも不自然さを感じ取ると、ロボットに対してネガティブな印象を持ってしまうことあります。
これは、不気味の谷現象とよばれています。
これは、外見的・動作的に人間に似せて作られたロボットを、実際に人間が目にした際に発生するものであるとされています。
ロボットに関する技術は発展し続けており、より人間に似た印象を与えるものになっていっています。
しかし、その似ている程度が高まっていく中で、かなり高度なある一点を超えてしまうと、ポジティブな印象とは逆に強い違和感や恐怖感・嫌悪感・薄気味悪さといったネガティブな感情が発生してしまうのです。
これをグラフで表すと、ある一点までは、ロボットに対するポジティブな印象が右肩上がりに上昇するものの、それ以降はポジティブな印象はどんどん下降していってしまい、まるで「谷」のような線を描くわけです。
これを不気味の谷現象とよんでいるのです。
不気味の谷現象については、様々な議論があるため、科学的な検討の余地はまだまだ残されていますが、ロボットに対する認識は非常に心理学的な要素が強いものなのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。