コラム

9月生まれの心理学・カウンセリング・メンタルへルスの専門家 Part3

2019.9.27
  • 社会心理学
  • こころ検定4級

心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、9月生まれの著名な先生方がいます。
クルト・レヴィンは社会心理学におけるグループ・ダイナミックスに関する研究で有名です。

 

 

 

▶クルト・レヴィン

クルト・レヴィンは1890年9月9日のドイツ出身で、アメリカで活躍した心理学者です。

 

レヴィンは1916年にベルリン大学で博士号を取得し1921年に同大学の哲学と心理学の講師になっています。

 

この時期の心理学分野では、ウェルトハイマーケーラーらを中心としたゲシュタルト心理学の研究がスタートした段階でした。

 

そのため、レヴィンは彼らの影響を強く受けながら、動機や情緒あるいは科学論に関する優れた業績を残しました。

 

その後、ドイツではナチス・ドイツが台頭してきたため、ユダヤ人であったレヴィンは、1934年にアメリカに亡命し、アイオワ大学やマサチューセッツ工科大学で教鞭を取りました。

 

その過程で、認知不協和理論を提唱したことで有名なレオン・フェスティンガーの研究指導を指導教官として実施しています。

 

レヴィンは物理的な環境とは独立した存在として、心理学的な生活空間の概念について研究しました。

 

生活空間とは、個人の心理がいかにその個人を囲む状況や場によって変わるのかに関する考え方です。

 

心理学的な生活空間において、個人は比較的自由に行動するいくつかの領域内(仕事や家庭生活等がその例になる)で暮らしています。

 

これは物理的な空間に当てはまるだけでなく、心理的な空間にも当てはまるわけです。

 

空間に存在する諸々の対象にはそれぞれ価値があり、個人はそれを得ようとして近づきます。

 

レヴィンは生活空間の概念を通じて、人間の行動を理解しようとし、トポロジー心理学とよばれる力学的な理論を提起しました。

 

トポロジー心理学の中で、緊張・葛藤・誘発性・要求水準などの概念について実験的研究を精力的に実施したレヴィンは、パーソナリティ動機づけなどの研究に大きな影響を与えました。

 

レヴィンの功績として有名なものに、社会心理学におけるグループ・ダイナミックスに関する研究があります。

 

この功績を受けて、レヴィンは「社会心理学の父」ともよばれています。
グループ・ダイナミックスとは、前述の生活空間などの概念を社会心理学に活用したものです。

 

グループ・ダイナミックスとは、集団の基本的な性質、集団と個人の関係、集団と集団の関係、さらにはもっと大きな組織と集団との関係についての法則を実証的な方法によって明らかにしようとするものであり、日本では集団力学と訳されることがあります。

 

グループ・ダイナミックスのより具体的な特徴として、以下のようなものがあります。

 

(1) 理論的に意味のある実証的研究を重視する

(2) 研究の対象として集団の力動性(成員間の相互依存性)を重視する

(3) 社会科学全般への広範な関連性に基づいた研究活動の実施

(4) 研究成果の社会実践への応用可能性の重視

(特に理論と実践の統合を図るアクション・リサーチの強調)

 

グループ・ダイナミックスの具体的な研究領域としては、集団凝集性、集団規範、集団意思決定とその効果、集団構造、集団目標と集団業績、リーダーシップなどが挙げられます。

 

グループ・ダイナミックスの研究方法は基本的には実験を中心とするものですが、研究目的に合わせて、①現場研究、②自然実験、③現場実験、④実験室実験などがあり、多様な方法が存在しています。

 

グループ・ダイナミックスの理論は、当初はレヴィンの生活空間の概念や場理論を中心としたものでした。

 

その後、認知心理学の多種多様な理論、家族心理学などと関連が深いシステム理論などを取り入れながら、発展をしています。

 

レヴィンが専門とした社会心理学については、こころ検定4級の第5章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみてください。

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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