夏の風物詩であるかき氷と調味料で重要なうま味成分は、心理学とどのような関係があるのでしょうか。
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日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。7月25日は「かき氷の日」という記念日に制定されています。これは東京都・世田谷区にある一般社団法人・日本かき氷協会が制定したものです。なぜ、7月25日が「かき氷の日」なのかというと、かき氷の別名である「夏氷(なつごおり)」の語呂合わせで、7(な)2(つ)5(ご(おり))ということがあります。また、1933年の7月25日にフェーン現象の影響で山形県内で観測史上、日本最高気温である40.8℃が記録されたことも、この日が「かき氷の日」に制定されたきっかけでもあります。
そして、7月25日は「知覚過敏の日」にも制定されています。これは、知覚過敏症用歯磨剤「シュミテクト」を製造・販売しているグラクソ・スミスクライン株式会社が制定したものです。なぜ、この日が「知覚過敏の日」なのかというと、前述の通り「かき氷の日」でもあるからです。かき氷のような冷たい食べ物が歯にしみるのが知覚過敏なので「かき氷 = 知覚過敏」というイメージが強いという人も多いのではないでしょうか。
では、この「かき氷」と「知覚過敏」は心理学とどのような関係があるのでしょうか。知覚に関しては、心理学には知覚心理学という分野があり、研究が進められています。知覚心理学では、目・耳・鼻・舌・皮膚の主に五感に関する心理学的研究が実施されています。知覚心理学おいて、味覚には複数の確立された種類があることが判明しています。基本的には甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つがあります。また、それらが混ざり合ったもの、たとえば「甘酸っぱい」などもあります。よく誤解されがちですが、辛味というのは味ではなく、香辛料などによって発生する「痛み」の感覚なので、純粋な味とは区別されます。どうように、渋味も純粋な味覚とは区別され、辛味と同じように別の感覚であるとされています。
さて、かき氷は単に冷たい氷を食べるわけではなく、甘いシロップをかけて食べることが多いかと思います。これは知覚心理学における味覚の種類のうち「甘味」が重要な要素となっているわけです。しかし、知覚心理学の研究の結果、私たちは五感の中でも特に目(視覚)に常に強く頼ってしまっているということが判明しています。
知覚心理学の有名な実験に官能検査というものがあります。最も代表的な実験は3種類の炭酸飲料を目隠しした状態で飲み比べをして、どれがどのメーカーのものかを当てるというものです。実験に使用されたのはコカ・コーラ、ペプシコーラ、ドクターペッパーの3種類です。炭酸飲料を飲んだことがある方は、この3種類を間違えることなどあり得ないと思う方も多いかと思います。しかし、実験の結果、目で見ていないというだけで、味覚のみでは区別がつかなくなってしまう人が非常に多いことが分かりました。これは、炭酸飲料以外でも同様で、異なる3つのメーカーの「うす塩味」のポテトチップスや同じアルコール度数のビールなどでも、私たちは目に頼って食生活を送っていることが判明しました。
そして、この官能検査の結果はかき氷のシロップとも密接な関係があるのです。実は多くのかき氷用シロップ(※注意:全てではありません)は成分的には同じものであり、着色に使われているものが異なっているだけなのです。つまり、見た目の色が赤・青・緑・黄になっているという違いはあるものの、味に関する成分は同じなのです。私たちはそのことに気付かないで、目で見て「緑色のシロップ」であると知覚し、さらに「メロン味」というラベルを目で見ているわけです。その結果、勝手に自分の中で「メロン味」をある程度作り出してしまうのです。
このように味覚は非常に重要な感覚ではありますが、それよりも私たちは目から入ってくる情報に左右されてしまうのです。
知覚心理学については、こころ検定4級の第4章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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