スマートフォンは既に私たちの生活になくてはならないものになっていますが、心理学的に、スマートフォンには、どのような要素があるのでしょうか
現在、スマートフォンは日本だけでなく、世界中で多くの人々が使用しています。
人によっては、1人で複数台のスマートフォンを所有している方もいるのではないでしょうか。
しかし、このように普及しているスマートフォンですが、思わぬ形で、メンタルヘルスに悪影響を及ぼしていることが判明しています。
これは、いわゆる「スマホ依存」というものです。
スマホ依存の“依存”という言葉には聞き覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。
そもそも、依存症とは、アルコールや他の嗜好性のある物質を習慣的に使用してしまう行動のことです。
そして、使用を中断すると、離脱症状とよばれる身体的苦痛や自律神経の問題などの症状が発生します。
また、長期の依存状態は対象物の使用量や利用時間を増加させてしまうという問題もあります。
スマホ依存の問題で最もよく耳にするのは不眠に関する問題です。
これは交感神経の活性化(興奮)による自律神経の異常という観点から説明することができます。
スマートフォンの画面を見ることで、目から光刺激が視神経を通じて、脳に送られます。
私たちの脳は目からの刺激を知覚することで、外界の変化に瞬時に対応することができます。
逆に目をつぶって何も見ていない状態では、視覚的に外界に変化が起きていないという認識になるので、交感神経は活性化しません。
私たちが夜、ぐっすりと眠れるのは、部屋を暗くして目をつぶることで光刺激を遮断し、交感神経を抑制し、逆に副交感神経を活性化することで、リラックスすることができるからです。
しかし、スマートフォンの画面を見ることで、目から光刺激が供給され続け、交感神経が活性化されて眠れなくなってしまいます。
さらに、悪循環として、スマートフォンの画面を見る⇒目が冴える⇒眠れない⇒眠れないからスマートフォンを操作する⇒より目が冴えて眠れなくなる⇒気づくと朝になってしまっている、というような問題の連鎖が起こり、影響が拡大・深刻化することもあります。
スマホ依存の問題の中で意外に分かりにくいが、かなり深刻な問題を引き起こしているのが情報過多による悪影響です。
スマートフォンは大量の情報に気軽にアクセスできるツールです。
しかし、その情報量はとても1人の人間が適切に処理して活用できるレベルのものではありません。
インターネットを利用したり、アプリでゲームをしている際に「今、私は大量の情報を処理しているんだ」と思いながらスマートフォンを操作している人はいないと思います。
しかし、実際には目や耳から大量の情報がスマートフォンを通じて流入してきており、どうでもいい情報やちらっと眼に入っただけの情報も「どうでもいいか、どうでもよくないか」や「無視するか、無視しないか」という根本的なレベルで情報を処理しているのです。
この情報処理は脳と神経を活性化させます。
従って、前述のスマホ不眠の問題も、目からの光刺激の問題と同時に、画面に映った何らかの情報を処理することによる交感神経の活性化という問題も含んでいるのです。
どうでもいい情報も無視すればいい情報も全て処理してしまうため、スマホ依存の状態になると常に交感神経が活性化し、毎日、強い疲労感に見舞われるという生活になってしまいます。
スマートフォンは私たちの生活にとってなくてはならないものであり、既に利用している人にとって「使用をやめる」「解約する」というのは、非現実的であると考えられます。
これは、お酒やタバコ、ギャンブルと同じで、問題の無い範囲での利用や日常生活に支障をきたさない範囲での使用であれば、問題が無いというのと同じです。
なくてはならないものだからこそ、スマホに振り回される生活ではなく、上手く使いこなすことが、心身の健康のためにも重要であると考えられます。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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