コラム

笑顔と心理学の関係

2023.12.28 心理
  • 社会心理学
  • メンタルケアカウンセラー(R)

笑顔と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。 

 

日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。
8月8日は「笑いの日」として制定されています。
これは笑い声の「ハッハッ」から「8」「8」でという語呂合わせが理由となっています。
「笑いの日」は元々、敬老の日を国民の祝日に制定するための活動をしていた日本不老協会が中心となって発足された別協会である「笑いの日を作る会」によって
、1994年に設立されました。
また、関連する記念日として「ニコニコ」の語呂合わせから2月5日が「笑顔の日」に制定されており、
5月の第1日曜日は「世界笑いの日」にも制定されています。 

 

 では、笑いと心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
笑いや笑顔はポジティブな感情と関連する表情・行動です。
そして、笑いや笑顔は私たちにとって、重要なコミュニケーション手段の1つでもあります。
そのため、心理学では、生理心理学や感情心理学、社会心理学などの観点から笑いや笑顔についての研究が実施されています。
 

 

笑いは生まれつき誰でもできる顔の表情であり、感情表現ですが、笑いにも発達的な段階があります。
生まれてすぐにできる笑い・笑顔は自発的微笑とよばれています。
自発的微笑とは、特に意味の無い(意図的でない)無意識的な表情の反射のことを指します。
赤ちゃんの自発的微笑を見た両親等の周囲の他者には「かわいらしい」「愛おしい」などのポジティブな感情が発生することが判明しています。
その結果、抱っこをする・赤ちゃん言葉で話しかけるなどのような積極的なコミュニケーションによるポジティブな働きかけが実施されることになります。
この自発的微笑は自立した活動ができない赤ちゃんが両親などの大人の注意を引きつけ、サポートを受けやすくなるためのアプローチであると考えられています。
 

 

 自発的微笑は成長するにつれて、徐々に発生しなくなっていきます。
次に発生するのは、社会的微笑とよばれるものです。
社会的微笑は無意識的自発的微笑に代わって発生する意識的な(意味のある・意図的な)微笑みのことを指します。
社会的微笑は両親の顔を見たり、声を聞いたことに対する反応として現れます。
「社会的」という言葉が意味するのは、動物的で誰でもかまわない反射である自発的微笑とは明確に区別されるもので、社会的な人間として、相手を選んだ反応としての笑顔という側面が強化されています。
 

 

 笑いや笑顔はポジティブな感情であり、ポジティブな表情であると考えられます。
しかし、国や文化によって実は笑いや笑顔と感情の関係性が異なるということが判明しています。
たとえば、とあるサッカーの国際試合において、日本選手が試合中にどのくらい笑顔の表情を見せたかをカウントしたところ、日本代表チームの笑顔の回数が他国のチームと比較して多いということが判明しました。

ところが、この国際試合において、試合では他国のチームに終始押されており、1勝もできずに最下位となっていました。
つまり、試合中にポジティブな場面はなく、笑顔になれるような瞬間はないはずだということです。
では、なぜ日本の選手だけがネガティブな試合展開においても笑顔が多かったのでしょうか。
そこでさらに分析をしたところ、日本人選手の笑顔の回数は多いものの、1回1回の笑顔の非常に短い継続時間であったことが分かりました。
これは、ポジティブな感情との関連による笑顔なのではなく、コミュニケーション手段として挨拶代わりの笑顔であると考えられます。
従って、笑顔がどこの国・文化でも同じ意味を持つわけではなく、それほど深い意味の無い、特別な感情が伴わない笑顔というものもあるということなのです。 

 

 笑顔などの表情や楽しい・嬉しいなどのポジティブな感情については、こころ検定4級の第6章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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