社会心理学については、以前に基本的な内容をコラムとして書かせていただきました。今回はさらに詳細な社会心理学について解説していきたいと思います。
社会心理学では集団行動や集団意思決定について研究が行われています。
これは、共同作業や協力関係に関して、その心理的なメカニズムを明らかにすることを目的としています。
一方で、なぜ、協力できないのか、なぜ、集団の統率がとれないのかなどについても研究が進められています。
いわゆる「サボる」ということについては、協力ができていない状態であるといえると思います。
社会心理学では、いわゆる「サボる」ことを社会的手抜きとよびます。社会的手抜きとは、集団で協同作業を行う際に、一人当たりが投与する作業への遂行量(労力・努力の程度)が、人数が多くなるほど低下するという現象のことを指し、別名、社会的怠惰ともよばれます。
心理学者のラタネは科学的な実験を通じて、集団での協同作業の中で発生する調整ロス(誰が何をやるのか、いつまでにやるのかなどの作業に関する伝達ミスや調整ミスなど)以外にも、集団であるがゆえに発生する「手抜き」が作業を遅らせてしまったり、予想外の状況を発生させたりすることを明らかにしました。
ラタネは実際の集団と疑似集団(実は単独で作業をしているにもかかわらず、実験責任者から複数の他者と一緒に作業していると思い込まされている状態)の2つのグループで実験し、結果を分析しています。
具体的には、実験参加者に防音室の中に入ってもらい、大声を出す拍手をするという作業をしてもらいます。
実際の集団では、目に見える形で大勢の人がいる状態で、大声を出したり、拍手をしたりしてもらいます。
一方で、疑似集団の場合は「あなた以外にも大勢の人が同時に大声を出したり、拍手をしたりするので、あなたもやってください」といわれてはいるものの、実際に目で見て分かる形で自分の以外の他者はいないという状況です。
実験の結果、自分以外の他者の人数が増えるにつれて、個人が出す声の大きさや拍手の大きさが小さくなるということが判明しました。
さらに、この現象は実際の集団でも疑似集団でも同様に発生することが分かりました。
このような、社会的手抜きという現象が実験によって明確にされたわけですが、さらなる研究の結果、社会的手抜きが発生しやすい状況というものも明らかになっています。
他に誰かがいる状況で「サボって」しまうと、他者に「サボり」を見咎められて、後々、非難される可能性があります。
ですが、自他がどの程度「頑張っているのか?」を確認するのが難しい状況では、後で非難される可能性が低いので「サボりがち」になってしまいます。
それほど重要でもないことや、自分が重要な位置づけではないことについては頑張ったり、努力する必要性が低いので、相対的に「サボって」しまいやすくなります。
みんなで同じことをしていると、個々人の状態が目立ちません。
これが、Aさんは開封、Bさんが組み立て、Cさんが最終確認、Dさんが梱包などのように、それぞれが異なる作業をしているとすると、Aさんがサボれば全体の進行が遅れ、Bさんがサボれば、Cさんにしわ寄せが行き、Cさんがサボれば納品後にクレームが来る、というように責任の所在が明確になります。
しかし、集団で同じことをしていれば、一部の個人がサボっていても、結局誰の責任なのかということが不明瞭となり、サボりがちになってしまいます。
友達同士などのように親しい関係性がまずあり、その中で集団作業をすると、サボったことが後々、対人関係に支障を生じさせる可能性があります。
逆に一過性の関係性であったり、仲が良いわけではない場合は「サボりがち」になってしまいます。
自分が頑張らなくても、この集団なら他のメンバーが優秀だから目標が達成できる、という状況であれば、自分はサボっていても大丈夫ということになりがちです。
社会的手抜きに関しては、こころ検定4級の第5章で概観していますので、興味・関心のある方は
是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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