2015年から施行されているストレスチェックは、どのような現状にあるのでしょうか。
2015年12月から、従業員のストレスチェックが義務化されました。
これにより、従業員数が50名を超える事業所では1年に1回のストレスチェックが実施されるようになりました。あれから7年が経過し、現在、ストレスチェックを巡る状況はどのようになっているのでしょうか。
そもそも、ストレスチェックとは、改正労働安全法に基づいて企業・事業所が主体となって、従業員のメンタルヘルス対策を実施するということを目的としているものです。ここでいう事業所とは、学校などの教育機関、病院などの医療機関、市役所などの公共機関なども幅広く含むものであり、一般的な企業だけではなく、非常に多くの組織が該当するものとなっています。
ストレスチェックの具体的な目的と評価方法としては、以下のようなものがあります。
・ストレスチェックの結果を数値で示すことができる調査票(質問紙)を用いること
・数値だけでなく、図表などでも結果を表示することを推奨する
・数値に基づいて高ストレス者を選定し、医師による面接指導の要否を確認すること
・① 職場における心理的な負担の原因に関する項目を含む調査票(質問紙)を用いる
・② 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目を含む調査票(質問紙)を用いる
・③ 職場におけるソーシャル・サポートに関する項目を含む調査票(質問紙)を用いる
・高ストレス者選定基準は以下の2条件を満たすこと
①の調査票(質問紙)の評価点数の合計が高い者
①の評価点数の合計が一定以上かつ、①及び③の評価点数の合計が著しく高い者
このように、ストレスチェック制度では、質問紙を活用し、その結果を分析することで産業場面における精神衛生の一次援助サービスとして機能するものとなっています。
ストレスチェックの施行から約7年が経過した現在、ストレスチェックを実施する現場、特に人事総務部などの担当者からは、既に以下のような課題点・問題点が挙げられています。
・ストレスチェック質問票に記入する時間や労力に負担を感じる
・ストレスチェック質問票に回答した内容が会社に漏れているかもしれないと心配
・高ストレスと判定された際に、所属先から何度も呼び出しがあった
・ストレスチェックを受けないことで、所属先で差別や不利益な取り扱いをされた
・ストレスチェックの回答内容によって、所属先で不利益な取り扱いをされた
・高ストレスと判定された際に、産業医との面談を申請したことで所属先で
不利益な取り扱いをされた
・高ストレスと判定された際に、作業糸の面談結果が所属先に伝わり、
不利益な取り扱いをされた
これらの結果を見ると、やはり自身の精神的な健康状態に関する情報がどのように取り扱われるのかという点が重視されていることが分かります。その上で、実際に情報の扱われ方に問題があったということも示唆されています。また、ストレスチェック実施後に所属先から、ストレスチェックを理由に不利益な扱いを受けたという報告も挙がっています。
他にも、ストレスチェックに関する研究報告として、実施後の事業所側の対応によって、新たな問題が発生してしまったというものもあります。たとえば、健康リスク値の高い職場のみを選んで職場環境改善を行うと、管理監督者の改善への意欲が低下し、問題を隠すようになってしまうというケースがあります。また、改善策としてストレスの低減を前面に押し出すと、各従業員の動機づけの維持が難しくなり「ストレスチェック後の職場改善対策自体がストレスになる」という意見が出てしまうというものもあります。また、ストレス(リスク値)の低い職場では、従業員の主体的な関与が少なくなり、他人事となってしまい、ストレスチェック自体が形骸化し、回答率そのものも低下しまうという問題も発生しています。
このように、ストレスチェックが実施されている中で、様々な問題点も浮上して生きています。こういった現状を踏まえ、心理カウンセラーやメンタルヘルスの専門家には、より適切でより科学的・客観的・論理的な対応が求められています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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