心理学・精神医学では、自殺に関する研究でどのようなことが分かっているのでしょうか。
自殺に関する研究については、様々な研究所や大学で実施されています。
その中でも、特に日本の自殺研究の中心となっているのが、国立精神・神経医療研究センターです。
同センターは厚生労働省所管の国立研究開発法人です。
主な活動目的としては「精神疾患、神経疾患、筋疾患及び知的障害その他の発達の障害に係る医療並びに精神保健に関し、調査、研究及び技術の開発並びにこれらの業務に密接に関連する医療の提供、技術者の研修等を行うことにより、国の医療政策として、精神・神経疾患等に関する高度かつ専門的な医療及び精神保健の向上を図り、もって公衆衛生の向上及び増進に寄与すること」となっています。
組織としては、病院の診療科として、精神科・脳神経内科・脳神経外科・小児神経科・整形外科・心療内科・消化器科・循環器科・麻酔科・総合内科・リハビリテーション科・歯科・外科があります。
また、神経研究所としては疾病研究が第一部から第七部まであり、その他に診断研究部・微細構造研究部・遺伝子疾患治療研究部・代謝研究部・免疫研究部・遺伝子工学研究部・モデル動物開発部・実験動物管理室・ラジオアイソトープ管理室があります。
さらに、精神保健研究所として、公共精神健康医療研究部・薬物依存研究部・行動医学研究部・ 児童・予防精神医学研究部・精神薬理研究部・睡眠・覚醒障害研究部・精神疾患病態研究部・ 知的・発達障害研究部・地域・司法精神医療研究部・ストレス・災害時こころの情報支援センターがあります。
このように、国立精神・神経医療研究センターは、日本における精神医学の中心的な立場にある機関であるといえるでしょう。
比較的最新の話題としては、2020年に国立精神・神経医療研究センター内にある精神保健研究所・自殺総合対策推進センターにおける研究等の活動が、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターに移管され、より活発に独立した研究活動が実施されるようになりました。
日本では、1998年に自殺件数の急増があり、国が多額の予算を投じて、自殺に関する研究、特に予防に関する研究が実施されるようになりました。
その後、2003年3月には、国立精神・神経医療研究センターが編纂する学術紀要において「自殺学特集」が組まれました。具体的な内容としては、以下のような研究成果が掲載されています。
・自殺学とは何か?:自殺学の基礎
・統計学から見た日本の自殺の現状:自殺研究の総論
・自殺と性別の関係性:性的虐待との関係性やLGBTについて
・自殺と精神科診断学:DSMの診断基準やうつ病などに限定しない多角的研究
・自殺行動の生物学的研究:神経生物学的・分子遺伝学的研究
・自殺における社会的関係:新たな研究モデルの提言
・自殺学における家族という観点:臨床的ケアの実践とフィードバック
・自殺と安楽死の関係:当事者の自己決定という観点
・自殺と遺書の関係性:遺書の有無に関する検討
・地域における自殺予防対策:自殺に関する地域性の違いや地域ごとの予防対策
・遺族の心理・社会的な経験とその支援:サバイバーと社会的孤立化
このように、今から15年以上前の段階で、日本では自殺に関する非常に多角的・包括的な研究が実施されているのです。
特に心理カウンセラーなどの心理専門職が注目すべき点は、DSMにおける診断基準やうつ病と自殺の関係ではないでしょうか。
一般論として、世界的な精神疾患の診断マニュアルであるDSMにおいて、いくつかの精神疾患の診断基準に自殺企図や希死念慮などがあります。
また、うつ病に関しては自殺との関係性が強いことが挙げられています。
しかし、自殺に関しては、診断基準を満たすかどうかや、うつ病であるかどうかだけではなく、より多様な観点から、当事者の心理・精神を分析する必要があるということが研究の成果として判明しているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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