歯や口と心理学には、どのような概念なのでしょうか。
【目次】
日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。以前は日本歯科医師会が「む(6)し(4)」と読む語呂合わせになるということで6月4日が「虫歯予防デー」とされています。これは、元々、1939年から厚生省(現:厚生労働省)と文部省(現:文部科学省)の共同管理として「護歯日」(5月4日)として実施されていたものが変化したものです。護歯日は1942年に「健民ムシ歯予防運動」として実施されていましたが、この運動は1943年から1947年までは中止されていました。これが1949年に復活するのを機に、1日だけではなく、6月4日から6月10日の「口腔衛生週間」に変更・制定されました。そして、1952年に「口腔衛生強調運動」、1956年に再度「口腔衛生週間」に名称が変更し、1958年から「歯の衛生週間」、そして、2013年から現在の「歯と口の健康週間」となりました。現在もこの制度が継続されており、6月4日~10日は「歯と口の健康週間」となっています。
歯と口の健康週間は歯と口の健康に関する正しい知識を国民に対して普及啓発するとともに、歯科疾患の予防に関する適切な習慣の定着を図り、併せてその早期発見、早期治療を徹底することにより歯の寿命を延ばし、国民の健康の保持増進に寄与することを目的としています。毎年、6月4日から10日の間、啓発のためのポスター作成と掲示、新聞への広告掲載、テレビCMの放映、各地でシンポジウムなどのイベントが開催されています。
では、歯や口と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。精神疾患の一種に心身症という疾患があります。これは主に身体症状を伴う精神疾患であり、心理カウンセリングによる治療・支援の対象となるものです。たとえば、以下のような歯や口に関連する心身症があります。
口腔心身症は、ストレスによって舌の痛みである舌痛症、口の中の不特定の部分が痛む不定痛、口の中が乾燥する口腔乾燥症などの症状を示すものです。口腔心身症は外的な以上は認められず、歯科的治療を実施しても症状の改善が認められないという特徴があります。
食道心身症は、ストレスが原因で喉の奥に異物があるような感覚、何かの塊が引っかかっている感覚などの症状があります。歯科的な検査を実施しても、特に異常は認められないものの、喉の奥に違和感だけがあるというものです。
口臭症は、クライエント自身が口臭の存在を訴えるものの、実際には口臭は確認できないタイプと、クライエント自身が口臭の存在を訴え、実際には口臭が確認できるタイプの2つのタイプが存在します。このうち、実際には口臭は確認できないタイプが心身症としての口臭症であると定義されています。
る。従って、口臭症の治療・支援はクライエントの存在しない口臭に対する認知様式の修正が重要となり、認知行動療法や行動療法が有効であるとされています。
顎関節症の代表的な症状として、口が開けられなくなるというものがあり、主に5つのタイプと、4つの重症度の分類があります。この重症度を判定する際には、口がどれくらい開けられるかを1つの基準としています。また、クライエントの主観的な評価として、症状によってどの程度の苦痛や生活上の支障があるのかを点数化し、その点数の高さも重症度の判定基準となっています。
顎関節症は、心理社会的なストレスが原因で発症することも多く、抑うつや不安などの症状を併発することもあります。また、ブラキシズムという歯ぎしりの症状が認められるのも特徴です。ブラキシズムは起きている時も眠っている時も、繰り返し発生してしまうというものであり、ストレスが原因であるとされています。単なるブラキシズムの状態から、やがて、顎関節症や頭・肩・顔などの痛みへと症状が広がることがあります。
このように、歯や口もストレスの影響を受けてしまい、場合よっては心身症のような症状を示す場合があります。これらの症状は歯科医での治療では治らないケースも多く、その場合は精神科や心療内科を受診する必要があります。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。
医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。