人間同士の距離感について、心理学的に研究が実施されています。
心理学において、対人距離に関する研究が実施されています。
これは人と人との距離が及ぼす心理的な影響やストレスについて検討するものです。
人と人との距離感は、それ自体がコミュニケーションの一種として心理学ではみなされています。
ただし、距離が変化するだけで、特に言葉を交わしたりするものではないので、対人人距離は非言語的コミュニケーションに分類されます。
非言語的コミュニケーションは、無意図的・無意識的な要素が強く、感情的な表現となることが多いとされています。
たとえば、満員電車で見ず知らずの赤の他人と非常に近い距離になることがありますが、これは意図的なものではありません。
また、相手との関係性から無意識に距離が近くなったり、遠くなったりすることがありますが、これも無意識的に実施されることが多いものとなっています。
対人距離の研究は心理学よりも先に文化人類学において実施されてきたという経緯があります。
文化人類学者のエドワード・ホールは、相互作用の目標・対人関係の親密さの程度・役割行動などの観点から、相手の匂いや体温が感じられる距離で家族・恋人・親しい友人で許容される親密距離(45cm以内)、友人・知人などとの通常の会話における距離である個体距離(45~120cm)、商談などの仕事の話ができる距離である社会距離(120~360 cm)、講演など多数者を前にして緊張せずに一方的な働きかけのできる距離である公衆距離(360cm以上)の4種類に分類しています。
これが、対人距離に関する科学的な研究の先駆けとなったものです。
そして、この対人距離という概念の中に含まれるのが、パーソナル・スペースです。
パーソナル・スペースは、対人関係の指標・発展・維持・傾向を示す代表的な指標の1つであると定義されています。
そして、重要なのは「パーソナル」という部分ですが、これは「個人的な」「個人に属する」という意味があり、自分の周囲の個人的な空間がパーソナル・スペースであるということを意味しています。
つまり、パーソナル・スペースは自分が動くことに合わせて自由に動かせて、持ち運びが可能な空間であるとされているわけです。
これに対して、動物などにおける「なわばり」というものは、同じく個人(個体)に関わる重要な空間を指す用語ですが、自分と一緒に動いたり、持ち運んだりすることができない空間であるとされています。
パーソナル・スペースには、2つの要因があるとされています。1つは個人的要因とよばれるものであり、年齢・性別・パーソナリティ(性格)・精神疾患(精神症状)などです。
パーソナル・スペースは約12歳で、その後の大人の状態と同じスパースとなるという年齢的な特徴があります。
また、パーソナル・スペースは男性が女性より広いということが判明しており、特に男性同士では最もパーソナル・スペースが広くなるとされています。
さらに、精神疾患患者(クライエント)は、不安定で不適切なパーソナル・スペースを持ちやすいという問題を抱えることが判明しています。
これは、対人距離(パーソナル・スペース)がコミュニケーションの1つであると考えた場合に、コミュニケーションに関する問題を抱えていると考えることができます。
パーソナル・スペースのもう1つの要因は社会的状況要因とよばれるものです。
これは、対人関係・集団の状況・文化的要因などが該当します。
たとえば、対人関係の例でいえば、魅力的な人物に対しては、パーソナル・スペースが狭まる傾向があることが判明しています。
また、相手と何かを競い合っている状態よりも、何かで協力をしている状態の方がパーソナル・スペースは狭まるとされています。
さらに、相手との社会的な地位の差によって、ネガティブな印象を相手に持つ場合は、パーソナル・スペースは狭まるとされています。
このように、パーソナル・スペースには様々な要素があり、複雑な心理的過程から、人と人との距離が決定されているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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