お酒と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。
1月16日は「禁酒の日」に制定されています。これは1920年にアメリカで禁酒法という法律が施行されたことによるものです。
当時、アメリカではアルコールに対する強い批判があり、18の州で禁酒法が実施されていたものが、1920年には全州に広がることになりました。
しかし、飲料用アルコールの製造・販売・輸送が全面的に禁止されたことによって、違法に密造酒を製造・販売するという問題や、密造酒による健康問題、アル・カポネなどの密造酒の密売にかかわる反社会的なギャングの台頭などの様々な問題が発生したため、1933年12月5日に禁酒法は廃止されました。
では、そんなお酒や禁酒と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
日本には現状、禁酒法という法律はないものの、20歳になるまでお酒などのアルコール類を購入・摂取することは禁止されています。
これは、アルコールには生理的な採用として、様々な悪影響があるからです。
お酒に含まれるアルコールには中枢神経に対する抑制作用があり、適度な量の摂取は問題ありませんが、適量を超える摂取によって様々な問題・症状が発生します。
適量を摂取した場合、アルコールはGABA受容体に作用し、不安を低下させる作用があります。
その結果、リラックスした気持ちになり、よくしゃべるようになったりします。
また、笑い上戸・泣き上戸などように、人前で笑ったり、泣いたりという思いがけない行動をとることもあります。
これらは全て不安という感情がアルコールによって抑制された結果であると考えられます。
私たちには、大なり小なり、不安という感情があります。
これにより、対人コミュニケーションにはある程度の慎重さが常に伴っているわけです。これがアルコールの影響で低下することで、普段(素面)ではしないような、馴れ馴れしい態度や、人前ですることとしては少し過剰な「笑う」「泣く」という行動をとってしまうわけです。
ただし、これらの行動はアルコール依存症やアルコール関連障害の症状ではありません。
あくまで、アルコールによる薬理作用結果であり、笑い上戸も泣き上戸も「病気」ではないわけです。
適量を超えると発生する症状・問題行動として、歩行困難、複視(視界がぼやける)、嘔吐、突拍子もない行動、反社会的行為、支離滅裂な発言などが挙げられます。
さらに多くの量を摂取してしまうと、昏睡・尿失禁・呼吸停止、果ては死亡してしまうこともあります。
前述のような急性のアルコール関連問題とは異なり、慢性的な過度な飲酒がもたらすのが、アルコール依存症などの各種障害です。
いわゆる、アルコール関連障害には、アルコールによる中毒症状によるものと、アルコール性飲料の常識的な飲み方ができなくなる心理的問題・行動的問題の2つに分けられます。
構造的には前者の中毒症状の影響で、心理的・行動的な問題が発生するようになるという傾向が強いです。
アルコール依存症には、飲酒量・酒時刻・飲酒機会に対する抑制の減弱(いつでも、どこでも飲む)、飲酒行動の多様性の減弱(いつものパターンで飲む、連続飲酒する)、負の強化に対する飲酒の反応性の変化(飲酒に起因する身体疾患や経済的困窮、社会的制裁等に対する反応性の欠如)などの問題、飲酒抑制の障害ないし不能(酒が止められない)、渇望・飲酒中心性・強迫的飲酒欲求(飲酒への耐え難い願望、飲酒に対するとらわれ)、不快感情・自律神経症状・振戦・幻覚・発作・せん妄等の離脱期の症状、離脱症状軽減のための飲酒、アルコール耐性の変化などの問題があります。
このようなアルコール関連障害の治療・支援には、薬物療法・集団精神療法・行動療法・内観療法・家族療法・セルフヘルプ・グループを通した指導等が有効であるとされています。
特にアルコール依存症に関するセルフヘルプ・グループに関しては、断酒の会などの当事者コミュニティがいくつも存在します。
当事者同士で、他では話せないようなことを話すことで、問題の理解と改善を促進することができます。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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