いい姿勢の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。11月4日は「いい姿勢の日」に制定されています。これは、姿勢を意味する「ポスチャー」、定位置を意味する「ポジション」、前向きを意味する「ポジティブ」、これらの言葉を組み合わせた「ポスポジ」の名称で「姿勢の大切さ」を伝える活動を行っている滋賀県草津市の山口克志氏が制定したものです。山口氏が提唱する姿勢講座は滋賀県の認定講座として認められ、県内の小学校や企業などで開催されています。このような取り組みを通じて「いい姿勢」を身につけて健康になってもらうことが「いい姿勢の日」の目的となっています。
11月4日は「いい(11)姿(4)勢」の語呂合わせで、この日が選ばれおり、2023年に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。また、過去には11月1日が「いい姿勢の日」となっていた時期もありました。これは「1」という数字がピンと背筋を伸ばした良い姿勢に見えることがきっかけとなっています。
では、姿勢と心理学については、どのような関係があるのでしょうか。
脳は大脳(間脳)・小脳・脳幹(中脳・橋・延髄)で構成されており、それぞれの部位が様々な機能を司っています。このうち、中脳には身体を動かした際に視野のブレを抑える、倒れかかった時に頭部や身体を正常に立て直し、姿勢を維持する、歩く時などに運動を調節するなどの機能を司っており、私たちが姿勢を保ったり、いい姿勢を維持できるのは、この中脳の機能によるものです。
また、どのような姿勢なのかによって、自律神経の状態も異なることが判明しています。人間の姿勢は大きく分けると立位(立った状態)・座位(座った状態)・仰臥位(寝た状態)の3パターンがあります。このうち、立位と座位は脳の位置が心臓よりも上になります。そのため、重力に逆らって、心臓のポンプの力で血液を上へ上へと送ることで脳に血流が到達することになります。もし、低血圧などで血液を送り出す力が弱ければ、脳に血液が送られないことになります。そうなると、眩暈・立ち眩みなどが起き、最悪の場合、気絶してしまうこともあります。
一方で、仰臥位の場合、脳の位置と心臓の位置はほぼ平行になるため、立位や座位の時に比べれば、それほど心臓のポンプの力は必要なくなります。そのため、眩暈がしたり、気分が悪かったり、ふらついたりする場合は、血圧のコントロールが上手くいっておらず、脳に血流がしっかりと送れていない可能性があるので、なるべくその場で寝る姿勢(仰臥位)になることが緊急の対処方法となるわけです。心臓のポンプの力と姿勢に関連があるということは、姿勢によって自律神経の活動も変化します。立位・座位の場合、交感神経が活性化します。特に立位の場合、最も交感神経が活性化した状態になります。一方で、仰臥位の場合は、交感神経の活動は抑制され、比較的、副交感神経が活性化された状態になります。私たちが眠るときに仰臥位の姿勢をとるのは、交感神経を落ち着かせて、ゆっくりと休息をとれる状態を作り出すことにも貢献しているわけです。従って、自律訓練法などのリラクゼーション技法を実施する場合は、座位または仰臥位で実施することが多いです。
また、姿勢と感情には関連があるということが心理学の研究の結果として判明しています。実験の結果、背筋を伸ばしたり、胸を張ったりするとネガティブな感情が減少することが判明しています。また、前かがみの姿勢は計画性や実行力に関する脳の部位の機能が低下することも判明しています。ちょっとした姿勢の違いが脳や神経に影響を及ぼすことで、私たちの気持ちを左右することがあり、従って、ヨガなどで正しい姿勢・良い姿勢を整えることは、フィジカルだけでなく、メンタルにも良い効果を及ぼすことになるわけです。
このように、心理学では姿勢についても、様々な角度から研究が実施されているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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