法律と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。10月1日は「法の日」に制定されています。これは1928年10月1日に陪審法が施行され、翌年の1929年からこの日を司法記念日に制定され、その後、裁判所・検察庁・弁護士会の進言により法務省が1960年に10月1日を「法の日」に制定されました。この日は法の役割や重要性について考えてもらうことが目的であり、国を挙げて法の尊重、基本的人権の擁護、社会秩序の確立の精神を高めるための日としています。また、10月1日~7日は「法の日週間」であり、講演会や座談会など各種の行事を実施し、最高裁判所では法廷見学会を開催しています。
では、法律と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
応用心理学の一分野として、裁判心理学というものがあります。心理学の専門家が法律問題に関わるようになったのは20世紀の初頭であり、初期の研究は証言の信用性に関わるものが多かったとされています。その後、1960年代中期以降に欧米諸国で心理学者が裁判に関わる多くの実証的研究や理論的研究を行うようになりました。その背景には、法律家の側の社会科学における実証的データの受け入れや、心理学における研究の展開が進められています。特に記憶・情報処理・態度変容・偏見・社会的影響過程・意思決定・集団力学(グループ・ダイナミックス)などの法廷における様々な人間の行動に関わる要因の実証的・理論的研究が成熟してきています。具体的には、目撃者証言研究・尋問および自白研究・陪審員(裁判員)の選択・陪審員(裁判員)の意思決定・証言の信頼性評価・証人の信用性を規定する要因・子どもの証言の信用性を規定する発達心理学的要因・判決の心理・被告および被害者の特徴が判決に及ぼす影響などの研究が注目を集めています。
また、心理学の応用分野に政治心理学というものがあります。政治心理学とは、心理学的手法による政治現象の解明をめざす学際的領域のことを指します。従って、心理学だけではなく、社会学や政治学、法学などとも関連が深い分野となっています。政治心理学では、政治的態度・イデオロギー・世論・投票行動・集合行動・政治的社会化・政治的指導者のパーソナリティやアイデンティティなど、様々なテーマが研究対象となっています。たとえば、世論については選挙が近くなったり、社会的に何か大きな変化(新しい法律の施行など)がある際に「世論調査」が実施されることがありますが、この世論というものも政治心理学の研究対象となっています。
世論とは「公共的重要性のある争点をめぐって有意な数の人々によって表明される選好の複合体」と定義されています。世論の古典的研究としては、ステレオタイプとの関係から明らかにしようとしたものがあります。さらに、心理学的・行動科学的な世論調査技法が発達したことで、世論の構造や形成過程に関する経験科学的な知識の蓄積に大きく貢献していきました。しかし、他の多くの世論観を顧みずに世論調査で測定されたもののみを世論とするような極端な研究上の立場や、世論をたんなる多数派意見と見なすような社会通念を生んでいます。つまり「世論調査」と銘打って調査した結果こそが「世論」なのだという意見と、「世論調査」による大規模調査も、所詮は多数派の意見に過ぎないという意見があるわけです。
このように、法律による各種対応を実施する裁判の場も、法律を作ったり改正したりする政治の場も、心理学の研究対象となっており、その成果が活かされているのです。また、心理カウンセラーの国家資格である公認心理師が誕生したことで、公認心理師法という心理カウセラーの活動に関する法律も誕生しています。これは、心理カウンセラーの活動が公的に認められたと同時に、社会で活躍していく上での法的規制も重要となっているわけです。
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