宝くじと心理学には、どのような関係があるのでしょうか
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。9月2日は「宝くじの日」に制定されています。これは「9(く)2(じ)」の語呂合わせから、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)の宝くじ部が1967年に制定したものです。現在もそうですが、当時も当選しても引き換えられず時効となってしまう宝くじが多いことから、時効防止をPRすることが目的で制定されました。
そもそも、宝くじの正式名称は「当せん金付証票」であり、普通名詞は「宝くじ」ではなく「富くじ」が正式となります。宝くじが日本で初めて発売されたのは1945年の10月29日(※10月19日の説もあり)とされています。また、戦後最初の宝くじは「政府第1回宝くじ」とよばれており、くじ券には漢字で「宝籤」と記載されていました。別名で「漢字くじ」ともよばれており、ニセモノも出るほどの人気がありました。この宝くじは1枚10円、1等10万円であり、副賞として1等から4等まで白無地綿金巾(キャラコ)が用意されたほか、外れくじ4枚と金鵄(タバコ)10本が引き換えられる特典がありました。
現在では、1979年からスタートした「ジャンボ宝くじ」や、ナンバーズやロトを代表とする「数字選択式宝くじ」、「東京都宝くじ」、「近畿宝くじ」、「地域医療等振興自治宝くじ」など様々な宝くじが存在しています。また、宝くじによる収益金は、公共事業などの費用として人々の生活に役立てられています。
では、宝くじと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学の分野の1つに、経済心理学という分野があります。経済心理学は別名、行動経済学ともよばれ、経済学とも関係の深い分野です。また、人間の選択行動や意思決定、それを応用した消費者行動などとも関連しています。また、心理学の分野の中でも、学習心理学(行動分析学)や認知心理学、社会心理学、パーソナリティ心理学などの領域とも関係があります。これは、選択行動や物事や確率に対する認識(認知)、他者との協力や競争、就職先、進学先などの意思決定、選ぶことや決めることに対するパーソナリティ(性格)の影響など、様々な心理的過程が経済心理学(行動経済学)とつながりを持っているからです。
そして、経済心理学・行動経済学、そして、経済学の考え方として、期待値というものがあります。これは、簡単に説明すると、実際にもらえる金額(報酬)とそれが手に入る確率(可能性)から算出される数値です。たとえば、当選すると100万円がもらえる宝くじがあるとします。この宝くじの当選確率が0.01%だったとします。この場合、100万円 × 0.01% = 1000000 × 0.0001 = 100となります。つまり、この宝くじの期待値は100円であるということになります。もし、この宝くじが1枚500円で販売されているとして、1枚しか買わなかったとすると、期待値100円のものを500円で購入していることになるので、経済学的には、この時点でマイナスということになります。
では、この宝くじを1000枚買ったとしましょう。この場合、100万円の報酬が手に入る確率は、0.01% × 1000となるため、10%という計算になります。この場合の期待値は100万円 × 10%となるため、1000000 × 0.1 = 100000(10万円)となります。宝くじ1枚の販売金額が500円なら、500 × 1000 = 500000(50万円)となります。従って、10万円の期待値に対して、50万円の損失が発生しているため、より大きな損失となってしまう可能性があるわけです。これは少し極端な例ではありますが、宝くじ等のギャンブルを経済学的に計算すると、損失が期待値を上回ってしまうことが多いと考えられます。
しかし、ここで経済「心理学」や「行動」経済学という心理学的な観点から考えると、なぜ、損をするということが簡単な計算でわかるにもかかわらず、多くの人が宝くじやギャンブルを続けるのが解明されます。私たちは期待値という考え方に基づく意思決定や選択行動を実施するよりも、感情に突き動かされてリスクの高いことをしてしまうものなのです。
このように、経済学の数学的な観点からは説明しきれない人間の行動は心理学的な観点から明らかにすることができるのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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