持続可能な食文化の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。6月18日は国際で―でもある「持続可能な食文化の日」に制定されています。これは、2016年の12月の国連総会で制定されたものであり、英語表記は「Sustainable Gastronomy Day」となっています。この持続可能な食文化の日とは、持続可能な開発の目標を達成するため、持続可能な食文化への人々の意識を高めることを目的としています。
持続可能な食文化は農業開発や食の安全・栄養・持続可能な食料生産・生物多様性の保全を促進する役割を担う重要な要素となっています。そこで、地元の生産者とのつながりを作りや、貧困の削減や資源の効率的な使用、環境の保護、文化的な価値や多様性の保護に貢献していく必要があります。毎年、6月18日には国連総会や国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連食糧農業機関(FAO)などの加盟国や国連機関、その他の国際機関や地域機関と協力して、この国際デーを促進するよう働きかけが行われています。
では、食と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。食と心理学に関連する事柄として、次のようなものがあります。
食欲とは食べたいという欲求のことです。ただし、いわゆる飢餓のような生理学的なものとは異なり、食欲は心理学的な要素が強いものであると定義されています。空腹感や満腹感は基本的には脳の間脳や視床下部にある中枢で血糖値などに基づいて調整されています。一方で、間脳や視床下部は視覚・嗅覚・味覚などの感覚器からの情報や、記憶・思考などの認知機能、感情などの影響も受けています。そのため、食欲に異常が発生した場合は、身体的な要因だけではなく、心理的な要因が関係していることも多いとされています。
食中枢は脳の間脳・視床下部に存在します。食中枢は外側部の摂食中枢と腹内側部の満腹中枢の2つで構成されています。摂食中枢は電気刺激によって空腹感と摂食行動が発生します。一方で、摂食中枢が破壊されると食欲減退・摂食低下が発生します。満腹中枢は電気刺激によって満腹感と摂食停止が生じます。一方で破壊されることで過食・肥満が発生します。視床下部では、扁桃体からの情報を受けて、快 – 不快(美味しい – 不味い)に対応した行動をつかさどっています。つまり、食べる(摂食行動)と食べない(嫌悪行動)などが決定されるわけです。また、自律神経の反応として、血圧・呼吸・消化管反応などにより感情の表出とも関連しています。
食嗜好性とは、食べ物に対する好みのことであり、生得的に決まる要素と学習により獲得される要素、観念的な要素の3つによって決定されるとされています。人間は生まれつき(生得的)に甘味・うま味・薄い塩味・薄い酸味を好みます。一方で濃い塩味・酸味・苦味を嫌うという傾向があります。学習で獲得される食嗜好性は味覚嫌悪学習と味覚嗜好学習によるものがあります。観念的要素とは、他者からの意見や教育、宣伝・広告などにより影響を受ける嗜好性のことを指します。
特定の食品を食べない、あるいは特定の食品ばかり食べる行動のことを偏食とよびます。基本的には、食べる方の偏食よりも、食べないことの偏食(例:野菜を食べないなど)の方が問題とされ、解決・改善すべきであるされるケースが多いです。偏食の原因として、食べ物の外見・臭い・味などが嫌悪刺激となること、新奇刺激に敏感になってしまい、積極的な摂食が起きにくいなどがあります。子どもの偏食の改善をする必要があるケースは多いですが、ここで親が子どもに注意や叱責をすることは、食事場面を嫌悪的にするので逆効果であるとされています。
このように、食と心理学には様々な関連があり、精力的に研究が進められています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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