★前回の【問題編】はこちら
では、まずはひっくり返すカードの枚数ですが、皆さんは何枚のカードをひっくり返したでしょうか?
正解は「2枚」です。
では、どの2枚をひっくり返せばよいのでしょうか?
正解は「E」と「9」のカードをひっくり返すのが正解となります。
さて、皆さんの解答はどうだったでしょうか?
このクイズは認知心理学において「4枚カード問題」とよばれる有名な認知課題なのです。
多くの人が、2枚ひっくり返すということまでは正解できるものの、ひっくり返すカードの種類として「E」と「2」と回答してしまいます。
しかし、このケースだと「 E 」をひっくり返して、裏面が偶数の数字だった場合、【母音・偶数】の関係は確認済みということになります。
そして、「2」をひっくり返して裏面がアルファベットの母音だった場合、これもまた【母音・偶数】の関係を確認したことになります。
つまり、この2枚をひっくり返しても、同じルール確認を2度していることになり、単なる「2度手間」でしかないということになります。
そのため、仮に「M」をひっくり返した際に裏面が「8」だったとすると【子音・偶数】という事実が明らかになるため、ルールが間違っていたということが証明されてしまいます。
このクイズは「確証バイアス」という認知機能に関する問題をチェックすることができるものです。
確証バイアスとは、人間は推論の際に確証を得ようとする傾向が強く、反証による推論が困難であるという認知機能の偏り(バイアス)を示すものです。
このクイズに正解した人は「確証バイアス」の影響を受けずに、正しく情報を確認・処理する能力の高い人であるといえます。
実際の研究において、このクイズに1回で正解できる人は約5%程度であるとされており、ほとんどの人は確証バイアスの影響で「自分が知りたいことを裏付ける情報だけを追いかける」という間違いをおかしてしまうのです。
確証バイアスの影響を受けずに正しい判断ができる人は、 「E」をひっくり返して、裏面が偶数の数字であることを確認し、【母音・偶数】の関係を確認したら、「9」をひっくり返して裏面がアルファベットの母音ではない(子音である)ことを確認し、【子音・奇数】の関係を確認することができます。
これにより、【母音・偶数】というルールと【子音・奇数】(母音の裏は奇数ではない・子音の裏は偶数ではない)ということを確認できます。
つまり、このクイズに正解するためには「ルールが正しい」ことを確認するために、「ルールどおり」ということと「ルール違反は無い」ということを両方確認する必要があるのです。
このクイズは第1問目と構造が同じであるものの、正解者数が圧倒的に多くなるということが研究の結果、判明しています。
正解は2枚のカードをひっくり返すというもので、「ビール」をひっくり返して裏面が20以上の数字であれば、【成人・飲酒OK】の確認ができ、「15」をひっくり返して裏面がノンアルコール飲料であれば、【未成年者・飲酒ダメ】の確認ができます。
どうでしたでしょうか?
こちらのより身近なテーマの方が、同じ構造でも正解できた人が多かったのではないでしょうか?
実は、この「身近なテーマ」ということが非常に重要な要素となっています。
これは主題化効果とよばれる現象で、私たち人間は推論のテーマが身近なもの・具体的なものであると、正しい過程で結論を導き出すことができることが多いというものです。
いかがだったでしょうか?
確証バイアスとは誰もが陥ってしまいやすい「認知の偏り」です。
しかし、冷静・慎重に考えたり、身近なことに置き換えることで、バイアス(偏り)の影響を防ぐことができます。
普段から、認知バイアス(偏り)の影響を受けずに、物事を正確に理解し、素早く情報を適切に処理できれば、日常生活はより豊かなものとなります。
また、情報の氾濫する現代社会において、「自分にとって都合の良い情報だけを探す」のではなく、「いかに正解に近い情報を探すか」や「間違っていないことを確認する」という思考の「クセ」がついていれば、ビジネスの場面においても非常に有利に動くことができるでしょう。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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