現在、臨床心理学といわれる分野は多くの専門分野に細分化されており、しかも、それらの各領域がそれぞれ、さらに専門的な深化と進化を見せています。
また、臨床心理学の分野と関連する様々な他領域との関係をも深めていきながら、新しい研究分野を展開しつつ、その活動・実践をどんどんと拡大しつつあります。
従って、臨床心理学を理解するためには、そうした関連分野との境界線を明確にする必要があり「臨床心理学とは何か?」という概念を規定することは、少し難しいものとなっています。
このような状況において、比較的単純に臨床心理学を定義するとすれば「主として心理・行動面の障害の治療・援助、およびこれらの障害の予防、さらに人間の心理・行動面のより健全な向上を図ることを目的とする心理学の一分野」ということになるでしょう。
臨床心理学の誕生は、1896年に心理学者のウィットマーがアメリカのペンシルヴェニア大学に心理クリニックを開設した時とされています。
また「臨床心理学」という用語もウィットマーによって初めて用いられたといわれています。
ウィットマーは科学的な心理学の誕生に大きく貢献した心理学者であるヴントの弟子であり、しっかりと基礎的な心理学や心理学実験、さらには哲学に関する素養などを習得した上で「心理学の臨床応用」を展開していったわけです。
このヴントに連なるウィットマーの姿勢は、現在、日本をはじめとする世界中の臨床心理学研究や心理カウンセラーの実践活動に脈々と受け継がれています。
たとえば、以下のような大学の心理学科のカリキュラムがあります。
発達心理学・パーソナリティ心理学・社会心理学・臨床心理学など
カウンセリング・精神医学・心理学基礎実験・心理検査法など
心理学実験演習・卒業論文研究(ゼミ)など
卒業論文研究(ゼミ)
これはあくまで一例ではありますが、大半の日本の大学の心理学科では、上記のような教育カリキュラムが組まれています。
1年次はしっかりと基礎心理学を勉強することに専念されています。
また、心理統計学についても学び、データサイエンスとしての心理学の側面を重視しています。
そして、臨床心理学について学ぶことになりますが、あくまで座学の授業として、他の基礎心理学との関係や歴史的な観点から勉強することになります。
その後、1年次の基礎知識を受けて、2年次以降に応用的な心理学分野の勉強や、研究法・検査法・実験法などについて学びます。
また、2年次からカウンセリングや精神医学などの心理カウンセリングにとって重要な講義が受講可能となります。
そして、3年次により高度な心理学実験について演習形式で学び、いよいよ、卒業論文作成のためのゼミに加入します。
ゼミは最大で3年・4年の2年間在籍し、学生自身が主導する形で実験・調査を実施して、データを分析し、論文化していきます。
このような過程を経る中で、心理カウンセラーになりたいと考えている学生は「科学者としての視点」を身に着けてから、実社会でカウンセリングやアセスメントを仕事として進めていくことになります。
これはまさに、ウィットマーがたどった経緯と同様であるといえるでしょう。
日本には、日本心理臨床学会や日本臨床心理学会などの「臨床心理学」に関する学術学会があり、精力的に研究活動を実施しています。
また、各種カウンセリング手法や心理療法ごとに学術団体が存在しており、まさに「臨床心理学の深化と進化」に合わせて、細分化・多様化しています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。