発達心理学とは、主に精神の発達を対象として、時間経過に従って生じる変化に関する特徴や法則性、変化を推し進める要因について検討する心理学の分野です。
発達とは、子どもが生まれ、大人になる過程での変化を指します。
学習心理学における“学習”もある種の“変化”を扱うものですが、発達はより長期の変化・獲得であり、遺伝的な規定と環境の影響の交互作用として定式化されます。
遺伝要因はより基本的な発達に関わるものであるとされており、より個人的(個性的)な細かな発達は環境要因によるものであるとされています。
環境要因には、家族・家庭なども含まれますが、それらに加え、社会的・文化的な影響も含まれます。
発達心理学はアメリカのホールが19世紀末に児童心理学として創設し、それまで、あまり理解されていなかった児童の権利を擁護しようという運動と合わさりながら発展していいきました。
現在、世界的にかつてない高齢化社会が到来し、老年期の精神発達についての知見への社会的要請も高まってきています。
また、研究の方法論として、人間と動物の発達過程を比較する比較行動学(エソロジー)的な方法や、異文化間の発達過程の相違や共通点を検討する比較文化的な方法など、多様な広がりをみせており、心理学に限らず行動の発生学的説明を試みる学問領域を包含する総合的な発達科学として成長しつつあります。
日本では、日本発達心理学会という学術学会があり、盛んに研究が実施されています。
近年、単に「発達心理学」というのではなく「生涯発達心理学」という用語が使われるようになってきています。
生涯発達心理学とは、人間の受胎・誕生から老年までの生涯のライフ・コースを通じて、どのような恒常的な心理的特性が存在するか、どのような量的変化や質的変化を生ずる心理的特性が作用しているかなどを研究するものです。
従来の発達心理学が主に幼児期から青年期に至るまでの上昇的変化を対象にし、発達段階の特徴やその移行の過程を捉えてきたのに対して、生涯発達心理学は全生涯的な発達の中で見直していくというメタ方法論的な側面を含むものとなっています。
生涯発達心理学の理論・方法として、発達心理学者のバルテスは次の5つを挙げています。
また、生涯発達の普遍的なモデルとしては、発達し理学者のハヴィガーストやE.H.エリクソンらが、発達の段階とそれぞれの時期に解決しておくべき課題や危機について定義しています。
ハヴィガーストは乳幼児期・児童期・青年期・壮年期・中年期・老年期の6段階、エリクソンは乳幼児前期・乳幼児後期・幼児期・児童期・青年期・成人初期・成人期・成熟期の8段階を設定し、理論化しています。
ただし、生涯発達心理学は、こういった一般的な危機や発達課題の把握という視点にとどまらず、人間の発達を社会文化的文脈の中で、社会的ストレスに対して積極的な対処行動をとり、自己実現を目指して常に自らの力を発揮し続ける過程として捉えることを目標としています。
そのため、生涯発達心理学では知恵や熟達という概念が重要なキーワードになり、心理学の枠組を超えて、人類学・社会学・生物学などとの学際的な研究が進められている研究領域となっています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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